今が借りどきの住宅ローンの注意点
「今は長期金利が歴史的に低く、金融機関間で価格競争が激化しているので、住宅ローンは借りどきだ」と言うのは千日氏だ。しかし、住宅ローンには審査という壁もある。
「都市銀行やネット銀行は、金利は低めですが、審査基準が厳しい傾向にあります。一方、地方銀行や住宅金融支援機構(フラット35)は審査が比較的通りやすいという特徴があります。複数の金融機関に審査を依頼することをおすすめしますが、審査を通りやすくするために、頭金は用意しましょう。目安としては、少なくとも購入金額の1割を用意するといいでしょう」(千日氏)
また、千日氏は住宅購入時のリスクとして(1)「少し背伸びをした物件を買ってしまうこと」、(2)「住宅ローンの支払い方法で変動金利を選んだ場合の金利の上昇リスク」、(3)「夫婦2人分の融資を受けられるペアローン」を挙げる。
(1)については、結婚や出産などを機に住宅購入を決意したケースでは、新生活への期待が最大限に膨らんでおり、そこへ新築物件のモデルルームなどを見てしまうと、多少予算オーバーでも「絶対この家がいい」と惚れ込んでしまい、少し無理をしたローンを組んでしまいがちだ。
「皆さん、先に住みたい家を決めてから、ローンの計算に入る。だから払えるギリギリの金額までローンを組んでしまう方が多い。しかし、例えばボーナス払いを設定すると、今後景気が後退してボーナスがなくなったときに、ローンが払えなくなる危険があります」(千日氏)
次に、住宅ローンの金利には大きく分けると2種類ある。ローンを払い続けている間、ずっと同じ金利の「固定金利」と、金融機関の都合で金利を上下させる「変動金利」だ。変動金利は下がる可能性もあるが、上がるリスクもある。これが(2)の「変動金利を選んだ場合の金利の上昇リスク」だ。変動金利は上がるかもしれない代わりに、固定金利より安く設定されている。千日氏は次のように解説する。
「例えば18年11月現在、変動金利が0.4%程度、固定金利が1.5%程度と、依然としてかつて経験したことがないほどの低水準です。そのため、金利が低いうちに固定金利を選んでおくことは、賢い選択ではないでしょうか」
(3)の「ペアローン」とは、共働き世帯が増えた今、夫婦2人分のローンを組んで払っていくというものだ。夫だけの収入で住宅ローンを払う場合に比べ、大きな額を借りられるため、最近注目されている。だが、ペアローンには大きなリスクがあると千日氏は警鐘を鳴らす。
「ペアローンで、借りられるだけ借りてしまうのは危険です。借りられる額と借りていい額は違います。例えば夫婦のどちらかが失業や休職をしても、2人分のローンは支払い続けなければいけません」(千日氏)
家を買うときは幸せいっぱいで、視野が狭くなり、自分だけはなんとかなると思いがち。しかし、現実は決して甘くはない。
宅地建物取引士
マンション管理士、ファイナンシャルプランナー。著書に『マイホーム物件 得なのはどっち?』(河出書房新社)がある。
千日太郎
オフィス千日代表
公認会計士。「千日の住宅ローン無料相談ドットコム」運営。著書に『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)。