「消毒」して、「乾燥」させるは昔の話
▼切り傷・すり傷
身近なところでは、傷の扱いも時代とともに変わっている。その最たるものが「乾かすのか、潤すのか」。園田氏と聖路加国際病院で循環器内科医として勤務する水野氏は「感染がない場合は、潤った状態にするほうがいいといわれています」と口をそろえる。園田氏が言う。
「感染がないと判断される場合は、ほとんどの場面で消毒液もいらないかもしれません。柔らかくて敏感な部分があらわになっているところに消毒液のような刺激物が置かれると、細胞組織が壊れてしまい、かえって治りが遅くなる可能性があるからです。激しい傷にガーゼを使うことはありますが、日本は水道水が清潔なので、多くの場合はまず、傷口を水で洗い流すことが効果的です」
しかし、消毒液を塗る医師は「まだまだいる」(園田氏)と言う。
「昔はラップを使って湿気を閉じ込めたりもしていました。昔いた病院で、傷口にオロナインを塗ってラップを上から巻いて来院された患者さんがいました。これはリスクが高い。バイ菌感染が起きている場合は覆わないことも大切です。今はより適切に湿気を保つための絆創膏もドラッグストアなどで販売されています。時代が変わってきています」
症状緩和ではなく、症状を出なくする最新治療とは
▼花粉症
毎年春になると話題になる花粉症についても、治療法は日々進化している。園田氏はこう話す。
「減感作療法が一般化したことが最大の変化です。減感作療法とは、アレルギーを起こす物質を少量から継続的に体に投与していけば、体が慣れていき、症状が出なくなるという治療です。舌の下に投与する薬剤が主流になりつつあります。ポイントとなる時期の受診は必要ですが、毎日のように通院しないでも、自宅で治療が可能です」
日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学界専門医。日本赤十字社医療センター、静岡がんセンターなどでの勤務を経て2016年より現職。
水野 篤(みずの・あつし)
聖路加国際病院心血管センター・循環器内科QIセンター急性期看護学・臨床准教授。
2005年、京都大学医学部卒業。17年より現職。著書に『研修医のアタマと心とからだ』など。