ノーベル医学生理学賞の受賞で注目を集めた新しいがんの免疫療法。がんだけではなく、身近な病気でも新しい治療法や薬が次々と現れている。いつも通っている病院での治療は果たして最先端のものなのか。医師に話を聞いた。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の特集「本当にいい病院は、どっち?」の特集記事を再編集したものです。

手術、抗がん剤、放射線に代わる新しい治療法

▼ガン

薬の「常識」が変わったといえば、肺がんの治療薬「オプジーボ」が話題をさらっている。呼吸器内科が専門の園田氏が言う。

京都大学・本庶佑特別教授のノーベル賞受賞で注目された小野薬品工業のオプジーボ。2018年11月からは薬価が下がり、今後の使用者拡大が予想される。

「肺がんの治療は劇的に変わっています。学会のガイドラインも頻繁に変わっていて、専門医であってもキャッチアップするのが大変です。まず、ここ数年で分子標的薬が一般的になりました。簡単に言うと、がんが持っている分子だけを狙って攻撃する薬です。また、がんが持つ免疫から逃れる仕組みを働かせないようにして治療する薬も研究が進んでいて、その代表格がオプジーボなんです。1年で1000万円ともいわれる高額な費用のため患者さんのどの治療法を受けたいかの判断が慎重になりがちです。しかし、実際の肺がん治療では、治療開始までのスピードが大事。治療も薬も、セカンド・オピニオンを聞きにいくことは大切なものの、可能なかぎり早く治療を受けるほうが望ましい」

がんを根治するには手術で切ることが最初の選択肢に挙がるケースが多い。しかし、前立腺がんにおいては「切らない」という考えも有力になってきている。

「前立腺がんは手術だけでなく放射線治療でも根治が狙えるので、手術の後遺症が不安な人にとっては、放射線治療は有力な選択肢になります。また、悪性度の低い前立腺がんは寿命に影響しないことも多いので、すぐに治療を始めずに様子をみるという選択はしばしば行われています」(MEDLEY・斎木寛医師)

最新版ステロイドの効果のある使い方

▼アトピー

同じように、アトピーの原因であるアレルギーについても、分子標的薬が使用されるようになった。ただし、「ステロイド薬や免疫抑制製剤を塗るのが治療法の基本なのは今も変わらない」と園田氏は言う。

「ステロイドはたしかに副作用があり、なかには過剰に嫌う患者さんもいらっしゃいます。しかし、あらゆる薬には大なり小なり副作用があり、アレルギーの病気にはステロイドが効果を発揮します。過剰投与はいけませんが、副作用に注意しながら上手に使っていくことがポイントです」