「定年の延長」も事実上決まっている

公務員については、もうひとつ驚くべき「計画」が進んでいる。定年の延長だ。現在60歳の定年を2021年から3年ごとに1歳づつ引き上げ、2033年に65歳にするというもの。人事院が意見として内閣と国会に申し入れているものだが、国民がいまいち関心を払っていないうちに、事実上決まっている。さらに60歳以上の給与については、50歳代後半の水準から3割程度減らすとしている。

民間では高齢者雇用安定法によって、定年後は希望する社員全員について65歳まで働けるようにすることを義務付けた。ただし対応策は3つあり、(1)65歳までの定年延長(2)65歳までの継続雇用(再雇用)制度の導入(3)定年制度の廃止のいずれかが求められている。定年を廃止するケースでは、給与は実力主義に変え、年功序列賃金を見直す場合が多い。

民間の対応で最も多いのが65歳までの継続雇用(再雇用)制度の導入で、定年になっても雇用されるものの、再雇用のためそれまでの条件が白紙になり、給与が激減することになる。

定年延長に合わせて年功序列の見直しを

霞が関が考えている公務員の定年延長は、再雇用ではなく、定年の延長。ただし、それだと年功序列の賃金体系では給与が増え続けてしまうので、50歳代後半の7割にする、というのである。これが「民間並み」の制度見直しなのだろうか。

公務員の定年が伸びるに従って、公務員の人件費総額は増え続けることになる。2018年度予算での公務員の人件費は5兆2477億円。これに国会議員歳費や義務教育費の国庫負担金などを合わせた人件費総額は8兆円を超えている。

人件費が膨らむ問題もあるが、高齢者が官僚組織に居残ることになり、それでなくても高齢化が指摘されている官僚機構での、若手の活躍の場を失わせることになる。本来ならば、定年延長に合わせて年功序列の昇進昇給制度を見直し、若くても重要ポストに抜擢できるようにすべきだろう。

身分保障で守られている国家公務員の世界で抜擢を行うためには、成績を上げられない官僚の「降格」制度を作るしかない。だが、日本の今の制度では、官僚の降格はまず不可能だ。いったん、昇格したら定年まで給料が減らないのが公務員の世界である。