消費税は2014年に5%から8%に、そして2019年には10%に引き上げられた。産経新聞特別記者の田村秀男さんは「経済学的にはデフレ下の増税なんて非常識だ。それでも消費増税を実現できたのは、財務省官僚の裏工作があったからだ」という――。

※本稿は、田村秀男『現代日本経済史 現場記者50年の証言』(ワニ・プラス)の一部を再編集したものです。

敷き詰められたコインの上に並べられた「消費税」と書かれたブロック
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
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復興増税へ誘導されていく民主党政権

鳩山政権から菅直人政権、野田佳彦政権と民主党の時代は続きましたが、悪化していく日本経済をどうすることもできず、政府、日銀ともただ手をこまねいているだけの状態でした。

東日本大震災のような状況になってさえ、白川総裁は大々的な金融の量的緩和政策に踏み出そうとはしませんでした。日銀がとる政策は、大震災被害を受けた地方の金融機関の信用を維持するために最低限の資金を供給するといったところです。

海外の投機筋は、震災後の資金を確保するために日本の金融機関や企業が大量にドルを売って円資金を確保するはずだから円高になると踏んで、円買い投機に走ります。結果は1ドル70円台の超円高です。

しかも、菅政権は財務省に誘導されるまま、復興増税にのめり込みます。財務省が増税の舞台としたのは東日本大震災復興構想会議で、2011(平成22)年4月14日の第1回会合では、会議後、復興財源は増税で行うことで一致したと、財務官僚が記者説明しました。あとで、復興会議メンバーに訊くと、実際には増税論議はほとんどなかったにもかかわらずです。

「将来世代にツケ回すな」キャンペーン

復興会議はそのまま増税へと突き進みます。その復興会議メンバーの顔ぶれと言えば、議長の五百籏頭眞防衛大学校長、副議長の建築家安藤忠雄氏ら、経済問題はド素人が大半です。五百籏頭氏らは財務官僚に誘導されるままに増税に賛同したのです。

では経済学者やメディアはどうかというと、一貫して増税キャンペーンです。典型的なのが伊藤隆敏、伊藤元重の両東京大学教授です。日経の2011年5月23日付朝刊の「経済教室」で、両伊藤連名で「復興費用は全国民が薄く広い負担をすべき」「将来世代にツケ回すな」と提言したのです。

さらに両教授は国内のめぼしい経済学者全員に向かって「復興増税に賛同を」と呼びかけました。賛同者は2011年6月15日現在で113人にも及びました。なかには、財政や金融が専門外の学者も名を連ねていました。