産経以外の主要全国紙も「増税容認」

元財務官僚で財務省の内実を知り尽くしている高橋洋一嘉悦大学教授によれば、この多くが財務省におもねる御用学者です。署名に応じなかったマクロ経済学者も私の知るかぎり数人はいます。その全員が、経済が困難な時期に増税すべきではないとの当たり前の見識をもっていました。

私は反増税の主張を産経などの媒体で展開しました。日経、朝日、読売、毎日など主要全国紙の論説委員たちはこぞって増税容認です。私は「デフレ下の増税は日本をさらに痛めつける」と確信しています。これはデータとジャーナリストとして経済の現場から得た経験に基づいています。

その私の記事を高く評価してくれたのが浜田宏一イェール大学名誉教授です。浜田先生は「怪我をした子供に荷物を負わせてはならない」ときっぱりと言います。以来、浜田先生とはことあるたびに意見を交換するようになりました。

復興増税は“二次災害”を引き起こした

復興増税は両伊藤教授の言った通り「薄く広い負担」のように見えますが、「経済活動は限界値が大きく作用する」という経済学の常識を無視しています。「限界」とは例えば風船がいっぱいに膨らんだ場合、ほんの小さな衝撃でも破裂することをイメージすればよいのです。

デフレは需要不足によるものです。企業はデフレのために収益をギリギリで確保している、あるいは収益が減りつづけている場合、さほど多くはない税負担を追加されると、新規設備投資や雇用にますます後ろ向きになり、賃上げどころではありません。

実質賃金が下がりつづけている家計は年間数千円から1~2万円程度の増税でもその負担感は数倍以上になります。その結果、需要は大きく萎縮し、デフレ不況がひどくなります。

浜田先生の言うように、怪我をした子供の怪我は軽症であっても、荷物は余計に重くなるのです。

もうひとつ、デフレ下の増税は円高を進行させます。デフレとはモノに対してカネ、つまり円の価値が上がると市場では受け止められるからです。

円高では日本企業は国際競争力を失い、収益を大幅に減らします。こうして東日本大震災後の復興増税は“二次災害”を引き起こしたのです。