消費税3%→5%だけでデフレ不況に

こうした増税による災厄は、消費税増税でより鮮明に表われます。1997(平成9)年度には消費税率が3パーセントから5パーセントに上がっただけで、日本経済はデフレ不況に陥り、以来慢性デフレから抜け出せません。

ところが、復興増税に賛同した学者先生の大半はさらなる消費税増税を先導しています。なかでも吉川洋東大教授は東日本大震災から間もない2011(平成23)年5月30日に、「内閣府の社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」をまとめ、その後の大型消費税増税の道を付けています。

報告書では、1997年度の消費税増税がデフレ不況の引き金になったことを否定し、消費税率を引き上げても景気への影響は軽微と結論づけています。吉川氏らは1997年に起きたアジア通貨危機や山一證券の経営破綻などが不況の元凶だと決めつけていますが、激しい通貨危機と金融機関が大きな信用不安に見舞われた韓国や東南アジアのどこも日本のようなデフレ不況にはなっていないことを無視しています。

「民主党政権だから千載一遇のチャンス」

デフレ下の増税というとんでもない経済学上の非常識に染まっている日本の経済学界の恐るべき現実が露見したのが、先述した経済学者113人による復興増税賛同の“奉加帳”だったわけです。厄介なことに、こうした面々が財務省の消費税増税や緊縮財政路線を擁護しているのです。

2012(平成24)年に入ると、財務省による2段階の消費税率引き上げ案が煮詰まっていきます。まずは2014(平成26)年4月から3パーセント幅、1年半後には2パーセント幅になります。いずれも大増税です。

5%、8%、10%と書かれた旗が付いている、階段状に並べた積み木
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さすがに省内では「付加価値税の本場欧州でも3パーセントもの税率引き上げは前例がないし、景気への衝撃が大きすぎるのではないか」との声が上がりました。すると、勝栄二郎事務次官が言います。「いまは民主党政権だから千載一遇のチャンスだ。それを逃すわけにはいかない」と。

故安倍晋三首相は2023(令和5)年2月出版の『安倍晋三回顧録』(中央公論新社刊)で〈財務省は税収の増減を気にしているだけで、実体経済を考えていない。〉と述懐していますが、消費税増税はまさにその通りのことが背景になったのです。