物流界の日本版ウーバー事業拡大の障壁は?

【田原】松本さんのサービスは、タクシー配車サービスのウーバーに似ていますね。でも、日本でウーバーは規制の壁があって広がっていない。便利なのに規制緩和されないのは、既存のタクシー業界が反発しているからです。運送業界で非効率な多重構造がずっと続いてきたのも、利権の構造があるからですか。

【松本】どうでしょう。運送業界は車格によって2つに分けられます。大きな車格は許認可の世界なので、業界団体がロビー活動のような政治的な活動をすることはあると思います。ただ、非効率な多重構造が問題なのは軽貨物の世界。こちらは届け出制で、個人が簡単に参入でき、まとまりもない。軽貨物のほうで組織的な抵抗勢力があって、既存の枠組みを守ろうとしているという話は聞きません。

【田原】じゃ、どうしてみんな疲弊するやり方がいまも続いているんだろう。荷主とドライバーをマッチングさせるサービスがもっと早く出てきていてもよさそうなものだけど。

【松本】運送業界には「求荷求車」という四字熟語があり、マッチングへのニーズは昔からありました。ただ、マッチングのサービスがあるのは大きな貨物の世界だけだったんです。

【田原】どうして軽貨物じゃ誰もやらなかった?

【松本】業界の中にいると、そういうものだと考えてしまうのかもしれません。義父や私はもともと別の業界にいて、外から見ていたので多重構造のおかしさに気づけたのかなと。また、私と同じことを考えたドライバーがいても、個人事業主なので、多額のシステム投資をしようという発想にならなかったんじゃないでしょうか。

【田原】ライバル会社はないんですか。

【松本】ITを駆使してマッチングをするという意味では1社あります。ただ、そこは既存の多重構造の中に案件を投げる仕組みです。私たちのミッションは、マッチングすることではなく、ドライバーの働き方を変えること。多重構造のままつなげるだけでは意味がなく、直接つなげることでドライバーの地位向上に貢献したいんです。将来、私たちのサービスが普及することで、ドライバーになりたい人が増えればいいなと。

【田原】海外ではどうですか。同じようなサービスは、すでにあるの?

【松本】アジアは多いです、中国とか、インドネシアとか。

【田原】日本はアジアの中でもむしろ遅れている?

【松本】はい。アジアは配送のインフラが整っていませんでしたが、インフラが整い始める時期にITの波があった。日本は逆に整いすぎていて、出遅れた感じです。

【田原】将来は国際展開も考えていますか。

【松本】具体的な案ではありませんが、さまざまな荷主やEC事業者からは、「ピックゴーのきめ細かさは海外でも使える。一緒に出ましょう」という声はいただいています。