その1つは、「痴漢に遭うのは、若くて美人、セクシーな女性だ」というもの。そんな勘違いが当たり前に思われているからこそ、女性としては、「女性専用車両に乗ると自分のことを自分で魅力的な女性と考えているのではないか」と公的自己意識で考えてしまう。「私はそんなこと気にしませんよ」と気遣って振る舞ってしまう人もいるでしょう。
しかし、現実には男性のイメージに限らない多くの女性が被害に遭っています。女性でも痴漢被害に遭ったことがない人には、男性と同じような勘違いを持ってしまう人もいる。それは、嫉妬であり「やっかみ」にすぎません。そのせいで、必要のない余計な気遣いをしてしまうのです。
男と女の根本的な違いとは
男性の偏見はまだまだあります。「女性が加害者になるケースもあるだろう」。心理学的な知見でいうと、ありません。男と女の体と心は違うのです。どういうことかというと、女性は初対面の男性に性欲を抱きません。突然、目の前にどんなイケメンが現れても、すなわち性の対象にはならないのです。対して男性は、関係を築かなくても、性の対象とします。これは男性ホルモンであるテストステロンの作用です。だからこそ痴漢加害者は男性なのです。痴漢の常習犯の男性には、心理療法だけではなく、テストステロンの分泌を抑える薬を処方することもあります。
歴史的に見ても、世界中のレイプ犯はほぼすべてが男性です。女性専用車両を「男性差別」だと叫ぶような人は、このような実態を無視して暴論・偏見をさらしているだけ。女性は「公的自己意識」に縛られずに自由に振る舞えばいい、というよりもまず、男性側が自らの無理解、勘違いを正すことが必要なのです。
立正大学心理学部教授
東京大学大学院社会学研究科博士課程卒業。著書に『恋愛の俗説は8割ホント。』がある。