小選挙区制が導入されて日本の政治はどうなったか

1994年に小選挙区制が導入された。「定数2以上の中選挙区制から定数1の小選挙区制に移行して、政権交代可能な二大政党制を実現しなければならない」と著名なジャーナリストやニュースキャスターが旗振り役になり、小選挙区制に賛成すれば「改革派」で、当初から反対していた私などは「守旧派」に色分けされた。

しかし、小選挙区制が導入されて日本の政治はどうなったか――。風が吹くと一気にブームが巻き起こるために振れ幅が極端に大きくなって、政治が不安定化した。

一番最悪なのは、目先の選挙のことしか眼中になくて「おらが村」に予算を引っ張ってくる小粒な運び屋ばかりになってしまったことだ。天下国家や外交、大局的に日本の論点を語れる政治家がすっかり出てこなくなった。

小選挙区制を続ける限り、政治家に日本の将来を託すような政策立案及び議論は期待できない。小選挙区から出てきた政治家に、自ら選挙地盤を変えてしまう道州制のような統治機構改革ができるわけがない。ゼロベースの憲法論議や発議ができるとも思えない。「大前さんの政策提言はよくわかった。でも日本の政治でそれをどうやって実現するんですか?」

厳しい問い掛けだが、それに答えるなら一歩目は選挙制度の改正しかない。現状の小選挙区制では、日本の論点を政治が正しく抽出して、正しい方向で議論し、正しい決断を下すことはできないだろう。

年号が新しくなる。新しい年号で「維新」を唱える改革の旗手が登場することをまずは期待したい。

(写真=時事通信フォト)
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