ただ、今の金利水準から、これ以上の下げ幅の余地はなく、中長期的にみれば金利上昇のリスクを考慮すべきです。
それよりも問題は、住宅ローン利用者の金利上昇リスクに対する認識が低い点です。
おそらく、今回の日銀の発表を受けて、変動型でローンを組んでいる人、これから組もうと思っている人は、「金利が上がったら固定型に借り換えればいいや」と考えがちですが、これは安易な考え。
一般的に、金利が上昇する際は、まず初めに、市場の「予想」が反映される長期金利が上昇します。それから「実態」を伴った短期金利が後追いで上昇していくわけです。
前述した通り、固定型は長期金利、変動型は短期金利で決まりますので、「変動型の金利が上昇してきたから、固定型に乗り換えよう」と思っても、時すでに遅し。その時点で、すでに固定型は上がっています。
住宅金融支援機構の2017年度の民間住宅ローン利用者の実態調査によると、変動型を利用している人は約57%と半数以上を占めています。
しかも、同調査では、住宅ローンの商品特性や金利リスクへの理解度について、返済中に金利変動がありうる「固定期間選択型」や「変動型を利用した人の、4~5割が「理解しているか不安」または「よく(全く)理解していない」と回答しているのです。
住宅ローンを組むうえで大切なことは、金融市場の動きに一喜一憂して、金利が低いからと飛びついてしまうのではなく、住宅ローンの基本的なしくみを理解し、頭金や将来の返済プランなどをしっかり考えること。これが本当の買い時です。
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書は『50代からのお金のはなし』など多数。