「国は自国民の安全や保護に責任を持つ」と産経

さて新聞の社説はどう書いているのか。

10月25日付の産経新聞の社説(主張)は「両親らは『よく頑張った』などと涙ぐんだ。まず、安田さんの無事を喜びたい」と書き、自己責任の問題についてこう主張する。

「安田さんは2004年4月にもイラクで武装勢力に拉致され、3日後に解放されていた。今回の不明時は政府がシリア全土に『退避勧告』を出し、新たな渡航をやめるよう注意を呼びかけていた」
「危険を承知で現地に足を踏み入れたのだから自己責任であるとし、救出の必要性に疑問をはさむのは誤りである。理由の如何を問わず、国は自国民の安全や保護に責任を持つ」

納得できる主張である。政府には国民を守る責任と義務、そして使命がある。憲法は国民の生命と自由、財産を保障している。

「国際社会との連携による解放は、一定の外交の成果」

産経社説はこうも書く。

「菅義偉官房長官は『官邸を司令塔とする“国際テロ情報収集ユニット”を中心にトルコやカタールなど関係国に働きかけた結果だ』と説明した」
「安田さんは、国際テロ組織アルカーイダ系の過激派『ヌスラ戦線』に拘束されていたとみられる。安田さん解放の情報は、ヌスラ戦線などに影響力を持つカタールからもたらされた」
「日本政府の要請を受けたカタールやトルコが、何らかの仲介役を務めたことは間違いあるまい。国際社会との連携による解放は、一定の外交の成果である」

産経社説が指摘するように外交の成果であることは間違いない。

「身代金は支払わない」が原則だが……

しかし、次の産経社説の見解はいただけない。

「一方で菅氏は『身代金を払った事実はない』と強調した。テロリストを直接の交渉相手としない。身代金は払わない。これはテロと戦う大原則である」
「テロに屈すれば新たなテロを誘発する。身代金は次なるテロの資金となり、日本が脅迫に応じる国と周知されれば、日本人はまた次の誘拐の標的となる。原則は堅持されなくてはならない」

確かに「身代金は支払わない」というのが原則ではあるが、原則は原則にしか過ぎない。臨機応変に対応しなければ、人の命は守れない。国際社会の現実はそんなに甘くはない。日本政府もそこのところを十分に理解しているはずだ。ODA(政府開発援助)に潜り込ませて3億円が仲介国に渡ったという話もすでに流れている。