トイレ後の手洗いにも許可が必要
こんな雰囲気だから、トイレも休憩時間以外には行けず、ひたすら昼休憩まで我慢するしかない。時間が来たら、まずトイレの整列をする。自分の番を待ち、順番が来ると、大きな声で、担当官に向かい右手をまっすぐに上げ「はい、用便お願いします」と許可を得る。用便を済ませ、手を洗う場合も、大きな声で担当官に向かい右手をまっすぐに上げ「はい、手を洗います」と、すべての行動について許可を得なければいけない。
作業をしているときは常に緊張していないと、いつ指導を受けるか分からないので、必死に作業をする。
刑務所内で一番つらい訓練とは
考査訓練中は、毎日10時から外に出て行動訓練を行う。ほとんどが歩き方と整列の仕方だ。全員が同じ訓練を受けるのだが、年をとって満足に歩けない人や声の出ない人は担当官の厳しい指導の対象になる。シャバだと年寄りには配慮があるが、刑務所ではもちろん全く関係ない。
またこれがとびきり厳しいのだ。拘置所にいるときに、この訓練について聞いてはいたが、まさかこんなにまで激しい運動量とは思わなかった。
しかも、俺が入所したのは真夏の8月。炎天下で軍隊並みの訓練が実施されるのである。訓練の一つに、その場で足踏みをしながら大きな声で「イチ、ニ、イチ、ニ」と叫び、それを延々と30分以上連続で行うものがある。1分や2分ならどういうこともないが、30分も続くとノドはカラカラになるし、耐えがたいくらい体力を消耗する。その後の食事が食べられない人も多く、俺も3日間で3キロ体重が減ったという異常な訓練だ。
この訓練が2週間続く。2週間といっても、成績がよければ2週間で卒業できるということで、長い人は4週間もこの訓練を行うのである。まさに、地獄だった。ある意味、俺の刑務所生活の中で、一番つらいものだった。
訓練中は「刑務官には絶対服従しなければ生きていけないのだ」ということを徹底的にたたき込まれる。「反抗したら仮釈がなくなり、お前らが損をするだけ」だと思い知らされるのだ。だから、どんなに厳しい言葉でののしられても反抗せず、ただただ我慢するしかない。この屈辱は体験したものでなければ理解できないだろう。