洗濯工場は情報交換の場所
工場は刑務所によって違うが、俺が入った刑務所では、次のような感じだった。1工場と2工場は洋裁作業、3工場は家具や棺桶をつくる木工工場、4工場は紙折り工場で高齢者や知的障害者、身体の弱い人が中心にいて、ホームレスの人たちが多かった。5工場は革工場でコースターなどの商品もつくっていた。
6工場は印刷工場で、比較的刑期が長い受刑者が多い。夏は冷房が効いていてよいが、人間関係がとても難しいと聞いたことがある。7工場は金属工場で溶接作業をしており、バーベキューセットや運搬用の一輪車の作成、肥料詰めをしている。8工場では、地元のみやげものを作成。そのみやげものは、店で販売されることもある。
ほかに内装工場というものがあり、工場内の風呂まわりのことや雑草取り、ゴミ回収等を行っている。この工場は、高齢者などの重労働が苦手な受刑者が多い。
さらに、洗濯工場がある。ここではすべての受刑者の洗濯をしている。設備はシャバと全く同じものだ。400名以上の洗濯物を2、3人の受刑者で洗い、乾燥が仕上がった洗濯物を6、7名の人間でたたみ、工場ごとに整理して仕分け、3人の人間で配達する。また縫製をする人も2人いて、新人・入所者の貸与服の準備をする。
と、表向きは単なる洗濯工場だが、ここで刑務所内の情報交換が行われている。洗濯物をやりとりするときに、伝言を預かったり伝えたりする。メッセンジャーだ。
それと、炊事工場。受刑者の食事をつくるのだが、ボイラー資格者などは朝の4時半から1日11時間作業をする。それ以外の者でも6時からの作業で、とてもハードな工場だ。炊事工場は一般的に仮釈がたくさんもらえると言われているため、みんな入りたがる。だがそれは都市伝説でしかない。
刑務所内のエリート部門はどこか
刑務所でやりたい作業ナンバーワン・ツーとされるのが、図書工場と官計算工だ。図書工場では刑務所にある官本の貸与作業と差し入れ本の整理をする、全国的にも憧れの作業工場なのだ。しかしこの工場は狭き門で、400名近くの中でたった6名しかこの作業につけない。
さらに狭き門なのが官計算工だ。刑務所内で一番人数の少ない工場であるため、これも、なかなか選ばれない。ここでは、各工場の計算工がまとめた作業日報をチェックして、1カ月の作業時間を計算。その後、作業報奨金計算をし、パソコンに各工場の作業日報を打ち込み、作成・報奨金個人別・工場別の資料を作成するのだ。
この作業をするのは3名で、俺がいた最後の1年は2人で行っていた。この工場ではすべての受刑者の等工・作業時間を把握していて、仮釈や満期釈放になる受刑者の、最後の報奨金計算までやるから、誰が釈放になったかが分かる。
この2つの工場は他の工場とはまるで違い、刑務所の中でも“エリート”部門だ。