「情報ヒエラルキー」の壁を壊せ
日本の企業では、「情報を得ることが職位の権限」という考え方が根強くあるように感じます。「これは部長以上でないと手に入らない情報です」「これは課長じゃないと聞けない情報です」といった情報が存在しているわけです。
アマゾンには、このような考え方がありません。組織だけでなく、「情報にヒエラルキー(階層)を持たせない」という考え方も持っています。もちろん、会社の株価に重要な影響を与える情報は十分に配慮しますが、業務を遂行していくうえで一部の人だけが握っていればいい情報などない、と原則として見なしているのです。
情報の階層をなくし、関係者へ情報を横展開するのに欠かせないものこそ、メーリングリストです。これで情報を公開すれば、全員が同じ内容を目にすることができます。
部長だけが知っている情報を、課長が忖度しながら係長に下ろし、それを係長がまたまた忖度しながら若手に伝える、といった伝達の方法は、スピード感に欠けます。また、曲解される危険性や、伝達されない可能性もあります。情報のヒエラルキーを壊せば、これらのことが一気に解消するのです。
ただし、膨大な数のメールを読むことに追われて、重要な情報を見逃してしまう可能性が高いなら、ある程度の見通しが立ったプロジェクトのメーリングリストからは除名することも大切です。
権限を委譲する「任せる力」
アマゾンでは、「デリゲーション」という言葉をよく使います。日本語で「権限委譲」という意味です。
この反意語にあたるものの1つは、「囲い込み」ではないでしょうか。「これは部長の仕事だ。課長なんぞにやらせられるか」といった感覚です。深層心理には、「この“既得権”を手放すと自分の存在価値を失ってしまう」という恐れや不安があるのでしょう。
もう1つの反意語は、「抱え込み」です。「アイツはまだ頼りない。任せるには早すぎる」といった感覚です。その結果、仕事がパンクしてしまう、というのはよく見られる光景です。
自分の現在の仕事をできるだけ手放して、次のレベルの仕事に注力するのが、世界共通の考え方ですし、アマゾンも同じです。新しいビジネスを次々と手がけていく企業の場合、最初に仕事が下りてくるのはビジネスオーナー(アイデアの起案者)です。その人にさまざまな仕事が集中するため、仕事を誰かにお願いできなければ、あっという間にパンクしてしまいます。