大切なのは「自己評価が少しでも傷ついたら、などと過敏にならないこと、そのうえで、十分に内省的になること」です。たとえば、この記事を読んで、「自分にも直すべきところがあるな」と自分の欠点を見つめ直そうと思える人は大丈夫。そうならずに、「こんな奴がいるのか」と他人事のように思うあなたはかなり危険です。自己評価と、他人からの評価をきちんと冷静に分析できない。言い換えれば、他者からのフィードバックを活かせない人です。内省的になれない人、他者の考えを受け取れない人はリーダー向きではなく、上司にもなってはいけません。
部下としては、そんな上司とは「ほどほどに接していく」しかありません。面従腹背という言葉があります。表面上は従うように見せかけて、本心では距離を置いておく。もちろん、取り入れるところは取り入れてもいいわけで、自分をうまくコントロールすることが求められます。その点、ダメ上司は反面教師となります。
誰とどう付き合うか、見極めが肝心
そもそも、これだけ仕事が複雑化して、リスクが様々なところに潜む社会において、「特定の誰かについていったら万事安全」ということはありえません。リストラ、業界の不振……何が起こるかわからない社会では、どの人にどう接するか、どれくらいの人間関係の「幅」を持つか、きちんと自分自身で思考し続けることが大事です。
言ってしまえば、「俺についてこい」という自己流上司は、そういう「幅」の大事さが見えていない人です。それだけでも、ついていかないほうがいいと言えるでしょう。
愛知学院大学心身科学部心理学科教授
岐阜県出身。『悪意の心理学』『言語の社会心理学』(いずれも中公新書)など著書多数。