医師は収入が高いだけでなく、有利な融資も受けられる

したがって、Aさんの場合、3人の教育費を試算すると総額は約9000万円にのぼった。これではさすがの高収入のAさんでも、長男が大学に進学する頃から家計収支は赤字になってしまう。

このため、子どもが小さい間にできるだけ教育資金をプールしておくこと、収入が増えても支出が膨らまないようにすることなどをアドバイスした。

ただ、仮に不足した場合でも、医師には有利な融資制度がある。

各都道府県の医師会経由で申し込む「医師会提携融資」というもので、医師会が金融機関と協定を締結し、会員向けに融資を斡旋している。この制度は病院の開業資金や運転資金のほか、子どもの教育資金にも利用できる。事務手数料や保証料は無料で、一般的な銀行融資よりも条件は有利だ。

例えば、「京都府医師会融資斡旋制度」の場合、提携先は、京都中央信用金庫、京都信用金庫、京都北都信用金庫など。医学部進学に使える「子弟教育資金」の融資限度額は、年収の5倍以内(京都北都信用金庫は3000万円以内、ほかは5000万円以内)で、金利は1.2%(固定金利、返済期間20年以内、2018年1月1日実行分)となる。

固定金利で低利といえば、日本政策金融公庫の「教育一般貸付(国の教育ローン)」が代表格だが、融資限度額は、子ども1人につき350万円以内(海外留学の場合450万円以内)で、金利は年1.76%(固定金利(保証料別)、返済期間15年以内、2017年11月10日現在)となる。比較すると、条件の有利さがわかるだろう。

親が医師なら医学部志望の子にかけるお金は惜しまない?

さらに、Aさんの場合、妻の実家の父(つまり義父)も医師だという。Aさん自身は、自分の教育費用を奨学金などでまかなってきたので、「あまり気が進まないんですが」と言いながらも、孫への教育資金援助の贈与が受けられる可能性も高そうだ。

このように医学部進学を目指す場合、大学の費用はもちろん、小・中学生からの塾代や家庭教師代、高校生ともなれば、医学部受験の進学塾や予備校の費用など、かけようと思えばいくらでもお金をかけられる。

医学部進学のために、子どもの教育費を惜しまない例はまだある。

地方在住の開業医B子さん(40代)の長男は、中学生から、医学部進学に強い私立中高一貫校に通うため実家を離れて寮生活を送っている。実家も学校所在地も、地方にあるため、交通アクセスが非常に悪く、毎月、会う時は双方が東京まで飛行機で行く。その交通費だけでもかるく年数十万円。きっと、彼らの辞書に「節約」の文字はないのだろう。