医学部の受験熱が過熱している。かつて私立大学では偏差値40〜50台の医学部もあったが、今や国公立大学医学部とほぼ同等の難関となり、倍率も高くなっているという。医学部専門予備校「京都医塾」による書籍『うちの子、医学部ってアリですか?』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を紹介する――。(第1回/全2回)
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「医学部受験戦争」は激化している

本稿では、「本気で医学部を目指したい」という方に対し、医学部受験の最新動向についてお話ししていきます。

一部のメディアは「医学部地域枠の定員割れ」を報じ、地域枠の医学部合格のハードルが下がったと紹介しました。また、ご自身がかつて医学部を受験し、合格した経験がある保護者さまであれば、「比較的低い偏差値でも合格できる医学部があるのではないか」「国公立大学の医学部は難しいかもしれないが、私立大学の医学部なら十分チャンスがあるのではないか」と考えておられる方もいらっしゃるかもしれません。

ここ10年間ほどの医学部受験の全体的な傾向は「医学部入学定員はわずかに増加しているものの、総志願者数、特に私立大学の志願者数が大幅に増加し、合格の最低ラインが上がった」と要約することができ、受験生にとって「医学部受験競争」は激化しているのです。

詳しく見ていきましょう。

定員は増えたが、志望者数はもっと増えた

まずは医学部の入学定員についてです。

医学部の定員は、2008年に地域の医師不足や診療科の偏在を背景に「過去最大程度まで医学部の定員を増やす」と閣議決定されました。実際に見てみると2010年から10年間で484人増加しました(図表1)。

令和に入ってからも微増しています。ただし、今後も増加傾向が続くかどうかは不透明な状況です。

次に医学部の志願者数を見ていきましょう。

図表2の棒グラフは、医学部入試の入学志願者数の推移を表しています。国公立大学の志願者はほぼ横ばいですが、私立大学の志願者は2010年から2020年にかけて大きく増加。それ以降も高止まりしています。

図表2の折れ線グラフは、医学部入学定員の推移を表しています。入学定員の増加率に対して志願者数の増加率の方が大きく、定員が増えたことによって医学部に入学しやすくなったというわけではなく、それどころか激化していることがわかります。