「金持ちしか受験できない」は過去の話

②受験形式の変化

2つ目の要因は、医療に関する社会的課題解決を目的として、医学部の定数の増員とともに、一般選抜、学校推薦型選抜※1、総合型選抜※2、医学部地域枠などのような様々な入試形式や枠が用意されるようになったことです。

※1 旧推薦入試。出願時に学校長の推薦が必要な入試。「指定校制」と「公募制」がある。
※2 旧AO入試(アドミッション・オフィス入試)。高校における成績や小論文、面接などで人物を評価し、合否を判断する入試。

特に医学部地域枠※3では、一定期間指定の地域で勤務すれば学費を免除するといった学生の経済的負担を軽くする制度が設けられたこともあり、一般家庭であっても私立大学医学部への進学を検討することができるようになっていると考えられます。

※3 地方の医師不足を解消する目的で大学医学部に設けられた入試枠。医師免許取得後に規定の年限、指定病院で働くことを条件として、奨学金が返済免除されることもある。

出身大学にこだわらない受験生が増えた

③「医師臨床研修制度」の導入

2004年、「医師臨床研修制度※4」が導入されました。これは、「診療に従事しようとする医師は、医学部卒業後2年以上、厚生労働大臣の指定する病院において研修を受けなければならない」という制度です。(詳細は※4参照)

※4 医師免許取得後に行われる医療現場での研修(初期・後期)。2004年から2年以上の初期臨床研修が必修化された。この臨床研修制度の導入に合わせて、どの研修医がどの病院で研修をするかの組み合わせを一定の規則に従って決める「研修医マッチング」という制度が新たに採用された。

医師臨床研修制度が導入されるまでは、医学部を卒業した研修医は、卒業した大学の医局に入るのが一般的で、出身大学とつながりのない病院に入局しづらいとされていました。しかし医師臨床研修制度が導入されてからは、出身大学とは直接つながりのない大学病院や市中病院で研修を受けるケースが増えました。初期臨床研修を終了した後も、あらためて自分の希望する病院へ就職しなおすことが比較的容易にできるようになっています。

この制度によって、特に私立大学の医学部受験は大きく変化しました。つまり、医学部受験において国公立大学であることや偏差値が上位である大学、地元の大学などにこだわるよりも、「いち早く医師になること」を優先し、私立大学、それも自分と問題などの相性が良い大学、合格可能性が高い大学を選ぶ受験生が増えたのです。