「社論」の極論化は新聞の読者離れを進めるだけ

こうした部数の低迷は「新潮45」のような雑誌に限らない。新聞も発行部数を落とし続けている。

そして新聞社も、一定の読者を確保しようと、「社論」を極論化させている。まさに貧すれば鈍するで、沙鴎一歩は新聞の読者離れを進める一因ではないかと疑っている。

たとえば産経新聞。今年2月8日付の1面と3面に大きく「おわびと削除」を掲載した。これは昨年12月、沖縄県内で起きた交通事故で「米兵が日本人を救出した」と報じた記事が「誤報」だったことを認めるものだ。産経は誤報の原因を「沖縄県警への取材を怠る」など取材が不十分だったとし、さらに記事のなかで沖縄の地元2紙を批判したことに「行き過ぎがあった」と謝罪した。

沖縄の地元2紙を「日本人として恥だ」と罵った産経新聞

この産経新聞の誤報に対し、毎日新聞の社説(2月10日付)は「報道の本義を再確認する」との見出しを付けて厳しく批判した。全国紙でこの産経新聞の誤報を社説で取り上げたのは毎日新聞だけだ。

毎日社説は「残念ながらメディアは間違えることがある。だからこそ、私たちも他山の石として自戒したい」と主張したうえで、「ただし、今回の産経記事が特異なのは、琉球新報と沖縄タイムスの地元2紙が米兵の行動を『黙殺』していると一方的に非難し、インターネット版では『メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ』とののしったことだ」と指摘している。

産経新聞はこの毎日社説の批判に何の反論もしなかった。おそらく反論できなかったのだろう。急所を突かれたわけで、ぐうの音も出なかったのだと思う。

さらに毎日社説は「自民党の会合で米軍に批判的な沖縄2紙を『つぶさなあかん』という発言が飛び出したことがある。産経の記事も同様の考えを背景に、事実関係よりも地元紙攻撃を優先させたようにすら思える」と書いた。

この毎日社説の推測が当たっているとしたら、何とも情けない話である。産経新聞の報道姿勢は、ジャーナリズム精神を失っている。