ビジネスがうまくいっているなら、報告書はいらない

そのため、私は「問題解決」より、「問題発見」を重視すべきだと常々主張しています。日本が、企業や教育の現場で問題解決能力ばかり重視しているのは、はっきり言っておかしいですよ。だからイノベーションが起こらない。顧客の問題発見こそが「仕事」で、ほかはすべて「作業」にすぎないと考えてほしい。

だから、ネスレでは報告書はありません。報告書を作成するくらいなら新たな問題発見に時間を割くべきだからです。社長に就任してから日報も廃止しました。売り上げなどの数字があれば、報告すべきことはそんなに多くないでしょう。ビジネスがうまくいっているなら、それでいい。私が報告してほしいのは、うまくいってない場合。なぜうまくいっていないのか。

報告は、口頭で30秒や1分で伝えるようにと言っています。結論や問題の要旨はその時間で十分説明できます。1分あっても伝えられないのは、報告者自身が、何が問題かわかっていないから。「帰れ!」と言って終わりです。どんな会議も、基本的には30分以内で終わらせる。パワーポイントのスライドは絶対3枚以上見せるな、できればないのが理想だと言っています。

今、短時間で生産性を上げる、働き方改革が国を挙げて推進されています。企画書にしろ、報告書にしろ、目的が不明確で時間を奪うだけならば、1度やめてみてはいかがでしょうか。

▼報告書不要。口頭で簡潔に報告する
○:いい報告例
悪い報告があります。来月A社に納品予定の商品の件です。商品に使用する部品をB社に発注していたのですが、部品に不具合があり、当初予定していた8月15日の納品が難しい状況です。
結論と、問題の要旨が端的にわかる
×:わるい報告例
すみません、課長、ちょっとよろしいでしょうか。いま進めているA社への8月15日の納品に関して、昨日、B社の営業部の山本さんから電話がかかってきまして、生産ラインでトラブルがあったそうでB社からうちへの部品の納入が遅れてしまうそうなんです。それでA社に確認したら、「納期が遅れるのは困る」と怒られてしまいました。
一体何が言いたいんだ……
高岡浩三(たかおか・こうぞう)
ネスレ日本社長
1983年、神戸大学経営学部を卒業後、ネスレ日本入社。2005年、ネスレコンフェクショナリー社長に就任。10年、新しい「ネスカフェ」のビジネスモデルを構築。同年11月からネスレ日本社長兼CEO。
(構成=伊藤達也 撮影=熊谷武二)
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