難しいのは「顧客が抱えている問題」を発見すること

対して、私が考える破壊的なイノベーションとは「新しい現実」の中で「顧客が抱える問題」を発見し、「解決策」を示すことです。そうして世の中になかった付加価値の高い商品やサービスを生み出す。アワードの応募フォーマットをさらに簡潔にしたA4・1枚の説明用フォーマットがあるのですが(図参照)、これはまさにその考え方に焦点を当てたもので、イノベーションを生み出すための考え方の訓練になるものなのです。

「新しい現実」を見つけること自体は難しくありません。なぜなら、現前とそこにあるわけですからね。難しいのは、「顧客が抱えている問題」を発見することです。顧客すら気付いてない、もしくは諦めてしまっている問題を発見する――それさえできれば、イノベーションはほぼ達成しています。

図は2016年にイノベーションアワードの大賞に選ばれた「ネスカフェ スタンド」の説明用フォーマット。イノベーションアワードの応募フォーマットを、さらに簡潔にしたものだ。「ネスカフェ スタンド」は、現在では25駅に店舗があり、関西を中心に、関東にも進出。

弊社が今注力している「ネスレ ウェルネス アンバサダー」を例にとると、新しい現実は「日本では、平均寿命が伸びているが、健康寿命とギャップがある」こと。では、「顧客が抱えているけど、諦めている問題」は何かというと、「自分に不足している栄養がわからない」「自分が将来どんな病気にかかる可能性があるのかわからない」ことだと発見した。よくわからないままサプリを摂ったり、自己流の健康法を行っている人が多かったのです。

そこで、インターネットで食事や生活習慣に関する簡単な質問に答えてもらったり、LINEで食事の写真を送ってもらい、食事分析を行うことで、その人に不足しがちな栄養素が入った抹茶やミルクのカプセルを提供するサービスを始めた。さらに、希望に応じてDNA検査や血液検査も自宅で簡単にできるサービスも始めた。このように、顧客の問題さえ見つければ、その「解決策」は自ずと見つかります。