ネスレ日本史上最年少の30歳で部長に就任し、2010年に初の生え抜きの日本人社長となった高岡浩三氏。「キットカット」受験生応援キャンペーン、「ネスカフェ アンバサダー」など数々のイノベーションを生み出し、右肩上がりの成長を達成。その実績は、スイスのネスレ本社からもジャパン・ミラクルと評されている。

イノベーションを生みだすフォーマット

新しい商品やサービスに求められるのは、イノベーティブかどうかというただ1点。そこで社長就任直後の2011年から社内で始めたのが「イノベーションアワード」です。年に1度、全社員から自ら実践した「イノベーション」をA4・1枚のエクセルにまとめて応募してもらう。今では年間5000件近い応募が集まります。

ネスレ日本社長 高岡浩三氏

では、アワードの応募フォーマットと、一般的な企画書とでは何が違うのか。それは、頭の中で考えたアイデアやプランだけを出すのではなく、自分で実際にやってみた結果を、実行した過程とともに記載してもらい、提案してもらっているところです。

また、一般的に、新しい企画だと思って提出しても、「イノベーション」でなく「リノベーション」の企画になってしまうことが多い。ここで言うイノベーションとは、『イノベーションのジレンマ』でクレイトン・クリステンセン氏が提示した「破壊的イノベーション」のこと。

本書に書かれているもう1つの概念「持続的なイノベーション」はいわば改善で、顧客が気付いている問題を解決すること。私の言うリノベーションです。例えば、コーヒーの味をよくしよう、価格を抑えようというのはリノベーション。もちろん改良は大事ですが、結局は競合との価格競争に陥ってしまう。