ただ「ミドリムシで飛ばします」とだけ訴える

私は「社員」という言葉を口にすることはありません。その代わりに「仲間」と言います。ユーグレナに入ったばかりの人たちは「新入仲間(しんにゅうなかま)」です。「ミドリムシで地球を救おう!」なんて、そんな突拍子もないことを一緒に頑張れるのは、単なる社員ではなく、特別な仲間だからです。

ユーグレナ社長 出雲 充氏

大切な本質は細部に表れます。「気は心」と言うように、気持ちが本当にこもっていれば、言葉づかいのわずかな違いにもこだわりが出てきます。逆に細部をおろそかにすると、敵が増えるのかもしれません。

ただ、私がはじめ社内で「新入仲間」「中途仲間」と呼んでいると、新人たちは返事に困った顔をするし、周りのみんなも恥ずかしそうでした。それが最近では、職場の会話で自然と「仲間」と口にする人たちが増えています。

普通と違うこと、前例のないことは誰でも恥ずかしいものです。しかし、そこで躊躇したらいけません。イノベーションも新しいビジネスも前例がないところに生まれるのです。

恥をかける人は、絶対に味方ができます。私は体験的にそう確信しています。

たとえば「ミドリムシを燃料にしてジャンボジェット機を飛ばします」と話したら、たいてい相手は呆気にとられます。緑色のネクタイを締めた男が訪ねてきて、いきなりそんなことを言えば「こいつ、大丈夫か?」と思うのが普通でしょう。でも私は科学的に自信があるから、ひるむことなく説明を続けます。そこで大切なのは「これとこれが整ったら……」と条件をつけないこと。ただ「ミドリムシで飛ばします」とだけ訴える。守りの姿勢であれこれ条件を言い出せば、自信がないと思われるし、せっかくの画期的なアイデアもインパクトは半減します。