SNS企業は独善的に振る舞ってきた

データの不正利用が明らかになるまで、ほとんどの人が、一度アカウントを開設すると、その削除を考えることなくSNSを使い続けてきたはずだ。頻繁に使うことはないが友人から誘われてアカウントを開設し、そのままにしている人も多いだろう。これは、“行動の慣性の法則”と言える。人は、一度始めたら、その行動を続ける傾向があるということだ。また、SNSが比較的新しいサービスであったため、個人情報の保護などに関する規制の適用も遅れた。

フェイスブックなどはある意味、その状況に付け込んで高成長を遂げたといえる。アカウントを継続して使用することが前提であったため、SNS企業はユーザーの退会を考慮してプラットフォームの構築を行ってこなかったようだ。実際、SNSアカウントの削除手続きは、かなりわかりづらい。アカウントを削除してもそれまでのデータが残るといった問題も放置してきた。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが不正利用の責任を認め謝罪したことは、同社が潜在的なリスクを認識していたにもかかわらず、必要な対応を取らなかったことを示している。それだけ、SNS企業は独善的に振る舞ってきたということだ。

大躍進の大きなツケ

今後、フェイスブックは、その“ツケ”を払わなければならない。フェイスブックはユーザーの履歴を削除する機能をリリースした。同社はオプトアウト(ユーザーの求めに応じて、データの第三者への提供を停止すること)機能を有料で提供することも検討している。

それでも、プラットフォーマーへの不信からユーザーの減少は続いている。ユーザーの減少は広告収入の減少に直結する。広告主もプラットフォームに魅力を感じなくなるだろう。フェイスブックなどにとって、ユーザーの減少は企業価値の減少とほぼ同義だ。

一方、コストは増える。SNS企業はデータ保護規制への対応や、偽情報の拡散防止に取り組まなければならない。フェイスブックは人海戦術で対応を進めている。不正検知のためのAI(人工知能)の開発などのコストも増えるだろう。フェイスブックが従来の高成長を維持することは難しくなっている。