不確実性が高いのは、何も就職活動においてだけではなく、企業が存在する市場環境もデジタル化による不確実性が高まっている。そのため、求職者は働くうえで「何かで確実性(=安定)を担保する」という志向を強く持つことになると考えられるが、この安定を「何に」求めるのか、というところで就社と就職の違いが生まれる。すなわち、安定を企業の能力に求めるか、自らの能力に求めるかという違いである。
就社型の想定する安定が、「安定したものの中にいることによる安定」だとすれば、就職型の想定する安定は「変化する環境に自分が対応できることによる安定」である。現在の若者は、大企業の倒産、合併というニュースを見て育ってきた世代である。彼らは、「安定したものの中にいる安定」を見いだしにくくなっており、そのことが、学生たち、特に優秀層の学生たちが就職型の求人に向かう動きを強める一因となっている。
デジタル時代を迎えた今、単に新入社員の頭数をそろえるのではなく、これからの時代に適合した人材を確保するためには、就職型の学生を惹きつけることができるような人事戦略が重視されるべきである。マーケティングが専門化し、高度化するなかでは、就職型の人材がきちんと育つ環境を企業内に醸成しなくては、企業が生存競争に勝ち残ることは難しい。
デジタル時代の人材獲得は大企業ほど厳しくなる
では、就職型の学生はどのような企業に集まっているのだろうか。筆者の見るところ、彼らは、デジタル事業を中核とした、いわゆるメガベンチャー(大企業並の規模や知名度がありながら、体質や事業はベンチャー企業のそれである企業)に集まる傾向にある。
イメージとしては、図1と図2を参照されたい。あくまで予測であるため慎重にならなくてはいけないが、就職型の学生は今後もメガベンチャー系の企業へと流れていく可能性が高い。なぜなら、大企業への入社後は「長期的にジェネラリストとして働く」ことが多い一方で、メガベンチャーなどでは「企業間の移動が比較的柔軟で、スペシャリストとして働く」傾向にあるからだ。
たとえば、メガベンチャーの代表格とされる株式会社サイバーエージェントでは、「ENERGY」や「ウェルカムバックレター制度」といった制度を整えている。
「ENERGY」を構成する8つの制度のひとつである「エンジニアFA権」では、各事業部で活躍するエンジニアが自己成長するためのチャレンジ異動を支援してもらえる。自らが望む専門分野へと飛び込む機会が制度として用意されているのだ。
「ウェルカムバックレター制度」では、退社後2年以内であれば、元の待遇以上で出戻り者が迎え入れられる。これは、キャリアの節目での他社への転職、あるいは労働市場に出ることを、ポジティブかつ柔軟にとらえることをうながす制度である。