一般的な有名大企業の人事施策と比較すると、メガベンチャー系の企業は専門性と柔軟性を持った働き方を推奨する傾向にある。こうした人事戦略こそが、「自らの能力で生きていけること」を望む就職型の学生を惹きつけている。
これは裏を返せば、有名大企業には、就社型の求職者ばかりが集まっている可能性を示唆する。デジタル時代以前のような安定成長が見込めた時代には、たしかに就社型の人材は重要な役割を果たした。しかし、これからの企業は、多角化や新市場の開拓、あるいはイノベーションの創出といった、より高度な企業活動が求められる環境を生き抜いていかなければならない。そうした環境に適した人材は、就社型ではなく就職型の人材である。
有名大企業は、サッカーをやりたいのに野球をやらなくてはならないという社内環境であることが少なくない。過去のジェネラリスト重視の時代はそれでもよかった。しかし、デジタル時代においては、そのミスマッチが優秀な人材のやる気の喪失や外部流出、あるいはそうした人材をそもそも採用できないといった問題の深刻化をもたらすだろう。
自社育成か外部調達か、という二元論を超えて
それでは、デジタル人材の候補群である就職型の求職者を惹きつけるためには、どうしたらよいのだろうか。企業の人材開発や人材採用においてはしばしば、Make or Buyという二分法の議論がなされる。「自社育成に比重を置く(Make)か、外部調達に比重を置く(Buy)か」という議論である。
しかし、デジタル時代において就職型の人材を惹きつけるためには、Make or Buyを超えて、MakeとBuyの統合をめざす人事戦略が必要となる。それが、“Make by Make, Buy by Make”である。
“Make by Make, Buy by Make”においては、第1に、就職型の求職者を惹きつける社内育成環境の確立が必要である。社外でも通用する専門人材へと新卒採用者を育成(Make)できることを打ち出していくことによって、さらなる就職型の求職者の獲得(次なるMake)が進む。Makeが次なるMakeを呼び込むのである。
第2に、就職型の人材は組織を離れてしまう傾向も強いと考えられるので、Buyも必要となる。ただし、このBuyは単なるBuyではなく、成長できる環境を提供する(Make)ことで、それを求めて中途採用でも人がやってくる(Buy)状態を実現することが重要である。
単なるMakeではなく、Makeの駆動によって次なるMakeとBuyとをドライブしていくことをめざすのが“Make by Make, Buy by Make”である。MakeとBuyを統合しなくてはいけない理由は明白だ。成長できる環境の提供なくしては就職型の人材はやってこないが、その人材がいつまでも同じ場所に留まっているとはかぎらないからである。そしてその人材が出ていった穴は、新しい人材で埋めなくてはならない。