「スマイル¥0」を復活させた理由
──QSCには、「サービス」もあります。
【下平】サービスマニュアルもすべて変えました。これまでのマニュアルは効率を求める面がありました。そこで「誠実さ」や「ホスピタリティ」をより重視し、あいさつの仕方やタイミングも変えました。そして、マクドナルドの強みであるスマイルの強化策として「スマイル¥0(ゼロエン)」を復活しました。またマニュアルは文字をたくさん読む必要がありましたが、外国人クルーには難しいので、写真で誰でもわかるようにしました。
──とても多くの細かい改善をされていますね。
【下平】お客様の視点に立って、事実をもとに必要なアクションを考えて、できることはすべて少しずつ改善してきましたね。
──2015年4月に「KODO(コド)」というスマホアプリを発表されました。店舗でアンケートに答えるとクーポンがもらえる仕組みです。
【下平】来店されたお客様がどのように感じたか、事実がわかる極めて重要なデータです。さらに「お友達やご家族にお勧めするか?」というアンケートではNPS(Net Promoter Score)といって、お客様満足度の変化もわかります。大切なのは、店舗に「評価には一切使いません。お客様のコメントはよく見て、改善できるところはすぐ改善してください」と伝えたことです。
「このレベルで満足していては、今後の成長はないぞ」
──評価に使わないのは大切なことですね。
【下平】店舗もスコアは、隠すようなことはしませんが、透明性を確保してオープンにしています。14万人のクルー全員が、KODOを知っています。店へのコメントはクルールームに「今日のお客様コメント」として貼り出して全員で見ていますし、お客様のコメントへのご返事も、店内に貼っています。KODOの全社スコアは、2015年第3四半期からNPSで大きく改善しています。このスコアは、お客様の印象そのものなので、必ずビジネスに結びつきます。
【下平】ここまではある意味想定内で、2年前も「何とかこのくらいはできる」と信じていました。問題はこのあとです。2017年後半から全店に「このレベルで満足していては、私たちは絶対に今後の成長はないぞ」とハッパをかけています。
──「解決すべき問題」が解決した時こそ、正念場ですね。
【下平】まさにリカバリーが終わった時こそ、本当の力が試されます。これまでの努力でお客様にご満足いただいても、お客様の期待は必ずもう一段上がっています。これまでのやり方は通用しなくなる。そこをさらに超えなければ、必ず再び厳しい状況になります。当たり前のことです。でもいい状況ではなかなかアクションを起こせません。私たちはサービス企業ですから、ゴールはありません。お客様の体験を一歩一歩向上する努力を、常に謙虚に行っていくのみです。