部下を信頼することが、リーダーへの信頼につながる

陸軍に入隊したとき、私はジョージア州にあるフォートベニングで士官としての基礎訓練を受けた。訓練が終わったとき、私は年上の軍曹からこう言われた。

コリン・パウエル/トニー・コルツ著、井口耕二訳『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)

「パウエル少尉、これで訓練はおしまいです。いいスタートを切られ、成功されることをお祈りしています。今日は、リーダーシップについて、一言だけご忠告申しあげたいと思います。部下の兵たちが好奇心からついてきてくれれば、あなたはいいリーダーということになります。そのうち、生きるか死ぬかという危険な目に遭う日が来るでしょう。そのとき、兵は皆、恐れ、不安にかられています。もちろん、それまであなたが十分に訓練した兵たちですし、やるべきことができるだけの武器や装備も用意されています。そのとき兵たちは、あなたがどのような方法でこのめちゃくちゃな状況から自分たちを救ってくれるのかを知りたいと思い、最後まであなたと行動をともにするのです」

軍曹は好奇心という言葉を使ったが、あれは信頼についての話だった。部下は、リーダーを信頼するが故についてくるのだ。リーダーを信じているから、自分たちがしなければならないことを信じているからついてくるのだ。

だからリーダーは、常に、チーム内に信頼関係を築くことを念頭に動かなければならない。リーダー同士の信頼、部下同士の信頼、そして、リーダーと部下のあいだの信頼を築かなければならない。そして、そのような信頼は、他人を信頼する無私のリーダーからしか生まれない。

コリン・パウエル(Colin Powell)
1937年、ニューヨーク市生まれ。ニューヨーク市立大学卒、ジョージ・ワシントン大学大学院修了。1958年にアメリカ陸軍に入り、2度にわたってベトナム戦争に従軍。レーガン政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めた後、ブッシュ(父)政権下の1989年、米軍制服組トップの統合参謀本部議長に史上最年少で就任、湾岸戦争などの指揮を執った。2001~05年、ブッシュ(子)政権の国務長官。現在は政界を引退し、バージニア州在住。
(写真=AFP/時事通信フォト)
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