エリート監督の誤算
【黒木】復路が始まる前、早稲田の渡辺康幸監督はもう自信満々で絶対に勝てると思っていたようですし、前日や当日の朝に会った早稲田のOBも皆勝てると思っていました。佐藤さんはどう感じていらしたんですか?
【佐藤】1日目が終わった時点でトップは想定外でしたから、これはどう組み立てようかなと。メンバーチェンジを含めて、一晩考えました。ここまできたら勝ちたい。渡辺監督のやろうとしていることは読めていたので、違うことをやるしかないという意識はありました。
【黒木】早稲田は6区で追いつき、突き放して逃げる作戦だろう、というような。
【佐藤】逃げるレースだろうと。渡辺監督は6区は58分台と言っていた。そこまでいかないというのが私個人の読みでした。よくて59分台前半、悪ければ60分近い。だから急遽入れ替えた6区の富永(光)にも60分台で走ればいいよと。
【黒木】実際、早稲田の加藤(創大)君がトップに立ちながら左脇腹痛を起こして大変苦しんだ。あそこから渡辺監督の計算が狂い始めました。
【佐藤】ああいうレースになると腹痛が起きやすいんですね。ちょうどいい距離(22秒差)で追いかけるから絶対に無理する。あちらは絶対的な自信があるから相当なオーバーペースでいくと思いましたね。富永には上りはやられてもいいから背中の見えるところでついていけと。下りになれば1回は必ずチャンスがくる。それだけしか指示しませんでした。
【黒木】主将で4年生の大西(一輝)君を最後の最後で外して2年生の富永君を6区に使うという決断はどの時点で?
【佐藤】5番手、6番手で往路が終わったら大西を使う予定でした。彼は59分台で走る走力がある。それに賭けるつもりで。しかし2週間前にアキレス腱を傷めて、10%はいかないまでも7~8%の不安がありました。
【黒木】往路優勝して棄権は避けたい。