【黒木】早稲田も山の上り下りが鬼門なんですよね。僕の現役当時も中村(清)監督に無理矢理やらされて、ひどい目に遭った選手がいました。

【佐藤】山は難しい。毎年同じ失敗をするので、川嶋監督もトラウマ状態になっていた。今回は私に上り下りだけ任せてくれないかということで、上り下りのチームをつくったんです。山古志村に連れて行ってアップダウンを走らせたり、標高1100メートルほどの蔵王の坊平高原でタイム設定せずに好きな時間に好きなだけ走らせる練習をした。放牧みたいに(笑)。このチーム編成が一つのポイントだった気がします。柏原なんか、合宿のたびに走りが格好よくなる。成長するんですね。

【黒木】柏原君のよさはどこですか?

【佐藤】競ったときに相手を前に出さない。テレビ画面では早稲田の三輪(真之)君が一時的に前に出たように見えたかもしれませんが、実際は柏原が終始前にいた。常に前、前、前というレースをする。あのへんがセンスというか、強さですね。教えてできるものではない。彼が最後に勝負を決めたところ、わかりますか?

【黒木】いえ。

【佐藤】黒木さんもよくご存じの場所です(笑)。早稲田と東洋の宿舎になっている武蔵屋別館前。早稲田、東洋という看板がかかっている場面で決めた。私はスパートしろとも何とも言っていないんですが、あそこからスポーンと逃げて20秒くらい開いた。偶然にしてもすごい勝負センスだと思いました。

【黒木】どこでスパートをかけるか、これはもう天性ですよね。そのあたり、瀬古(利彦)さんと似ている部分があるのかな。今後が楽しみですね。