アマゾンに対抗できるのはウォルマートだけ

わたしが見るかぎり、アマゾンに対抗できる小売業は、アメリカ国内ではいまのところ、世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートくらいでしょう。ウォルマートは、オムニチャネル戦略に本格的にとりくんでいるからです。

写真=iStock.com/LarryHerfindal

ウォルマートは2018年度にアメリカ国内でのネット販売の売上高が前年度比で四割増える見通しを示しています。2017年度の四半期ごとの決算を見ると、ネット経由の売上高が前年から5~6割増えているので、この見立てはおそらく現実になるでしょう。

ウォルマートのアメリカのネット通販市場でのシェアは約4%で、4割超を占めるアマゾンにはまだ遠くおよびませんが、その成長率はアマゾンをしのぎます。

目をみはるのは、ネット分野への果敢な投資です。

ウォルマートは2011年、シリコンバレーに拠点を置くソーシャルメディア関連のベンチャー企業を3億ドル(当時の為替レートで約240億円)で買収し、「ウォルマート・ラボ」を開設。2000人以上の技術者を抱え込むと、すぐれた技術をもつIT企業を十数社、立て続けに買収していきました。

2016年には、ネット通販の有力スタートアップ企業、「ジェット・ドット・コム」を33億ドル(同3300億円)で買収し傘下にとりこむと、その創業者であるマーク・ロア氏を自社のネット戦略を担う責任者として招き入れました。

ロア氏は、アメリカのEコマース業界の実力者で、ウォルマートのネット事業急拡大の立役者とされます。

オムニチャネルという概念は、メイシーズが使用したのが始まりと前に述べました。しかし、メイシーズはオムニチャネル事業を軌道に乗せることができずにいます。

それは、コンセプトでは先行したものの、IT人材が決定的に不足し、実行体制が整っていないことに原因があります。ここに、ウォルマートとの決定的な違いがあります。