9000万人で人口減は止まる!?

現在は明治以降に始まった人口増が限界に達し、人口減に転じたところです。このトレンドには抗いがたく、何をしてもすぐには人口増には転じません。人口減の原因は何であり、どうすれば食い止められるのか、答えが見えているわけでもありません。

しかし、だからと言って何もせずにやり過ごすわけにはいきません。これからの時代に我々が何をするか/何を見つけるかで、次世代がどのような社会に生きるかが決まるのです。

自然エネルギーの普及が道を開くかもしれませんし、IT/IoT技術の進化が切り札になるかもしれません。私は行動経済学や心理学からのアプローチがヒントになると思っていますが、いずれにせよさまざまな模索・挑戦の中から答えが見つかるのだと思います。

2115年に5056万人という推計は、あくまで「このまま何もしなければそうなる」ということで、数字がひとり歩きしている感があります。そうした中、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部は「2040年までに合計特殊出生率2.07を達成すれば、2110年の人口は9026万人となり、その後の人口を横ばいに推移させることができる」という推計を出しました。

荒唐無稽と言う人もいますが、私は「何もしなければ5056万人だが、手を打てば9026万人までで食い止められる」という数字が示された意味は、大きいと思っています。つまり我々には、子や孫に残す社会の未来を選択する余地があるということです。

▼日本列島が経験した4度の人口減少とは

日本は過去3度の人口減を経験している。「平成の人口減」は4度目だ。

(1)縄文後・晩期は寒冷化による食糧不足が主な要因で水稲耕作が始まるまで続いた。(2)鎌倉時代は荘園制による誘因低下が主な要因で、市場経済化が進むと農業生産性が高まって解消。
(3)江戸中後期は新田開発や資源確保の限界が晩婚化や人口抑制をもたらしたと考えられ、近代化によって打破された。
(4)平成の人口減は何によって転換するだろうか

鬼頭 宏(きとう・ひろし)
静岡県立大学学長
1947年、静岡県生まれ。著書に『愛と希望の「人口学講義」-近未来ニッポンの処方箋-』ほか多数。
 
(編集・構成=渡辺一朗)
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