ネズミ算式に増える相続人
街中で、荒れ放題の空き家を見かけることがある。空き家となっている理由はさまざまだが、なかには、所有者が不明であるために、空き家の状態が続いているものもある。
不動産の所有者は、法務局にある不動産登記簿で確認ができる。しかし、登記簿上の所有者が死亡しているなどして、現在の所有者が不明になっている不動産も多いのだ。
なぜ登記簿に現在の所有者の名前が載っていないのか。『人口減少時代の土地問題』の著者、東京財団研究員の吉原祥子氏はこう解説する。
「日本では不動産の権利の登記は任意です。登記には手間やお金がかかるので、不動産を相続や売買で取得した人が登記の必要性を感じず手続きをしなければ、登記簿上は前の所有者のままとなり、実態とズレが生じてしまう。相続の場合は代が進むとさらにズレが広がり、誰が現在の所有者なのかすぐにはわからなくなります」
相続では“法定相続人”がネズミ算式に増えるので、解決はますます困難になるのだ。
権利の登記が任意なのは、日本の不動産登記制度がフランス法の考え方を取り入れているからだ。
「フランス法では、第三者に『ここは自分の土地』と権利を主張するためには登記を必要とする、という考え方をとっています。ドイツ法のように登記しないと権利の変動そのものが成立しないという考え方もありますが、日本では採用されていません」