「公演が突然キャンセル」への反応でわかる人の成熟度

では、心理的な問題を解決すれば、「できるのにやらない人」は「すぐできる人」になるのか。それは理論の上では正しい。しかしながら、不登校や、ニートの存在から見ても、心の内側の動機づけの問題は簡単には解決できません。カウンセリングや言葉を尽くすことはできますが、どんな問題も解決できる「魔法の杖」は、存在しないのです。

ある天才指揮者は、公演を突然キャンセルしました。それでも皆がその指揮する音楽に触れたいと思い、「凡人と同じものを求めてはいけない」と、天才を受け入れました。相手に理想を求める人ほど、情緒的に未成熟です。相手に理想を押し付けて「裏切られた」と思う前に、自らが、他者の抱えるいろいろな種類の困難を受け入れられるように努力したほうが心は安定します。困難の色は一色ではありません。

加藤諦三(かとう・たいぞう)
早稲田大学名誉教授
ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員。『人生を後悔することになる人・ならない人』など著書多数。
(構成=伊藤達也 写真=iStock.com)
関連記事
デキる人が「異業種交流」を重視するワケ
デキる人が意識する"トラブル対応3原則"
デキる人は「やる気」を言い訳に使わない
デキる人は「自分の目標を言わない」
デキる人は「すみません」の後に凹まない