“縮む市場”への危機対応も待ったなし
「内紛劇」が表面化して以降、同社株は下落が続いている。昨今の投資家は業績に加え、ESG(環境・社会・企業統治)に代表される非財務情報を重んじる。その影響がモロに出た形だ。また消費者の信頼を損なった、という懸念もあるだろう。
実際、住宅業界で消費者の信頼を失い、受注減につながった例はある。15年10月に横浜市都筑区のマンションで発覚した不正杭打ち問題で、旭化成子会社の旭化成建材が工事を請け負ったことから、旭化成の「ヘーベルハウス」ブランドは長く受注減に苦しんだ。
積水ハウスは2018年1月期決算を発表した3月8日、企業統治の強化策を公表した。代表取締役に70歳定年制を導入したのに加え、女性社外役員の登用による役員構成の多様化を打ち出した。阿部会長は6項目の改善策について「全社的に取締役会の大改革に不退転の決意で取り組む」と強調した。
3月22日に発表された4月26日付の役員人事では社外取締役、社外監査役を各1人増員し、それぞれ女性を起用した。「お家騒動」で社内外に動揺が走ったのはいうまでもない。マイナスからのスタートを余儀なくされた新経営陣は、改革の成果を早急に示す必要がある。
同社を取り巻く状況は厳しい。18年1月期連結決算は売上高、最終利益ともに2期連続で過去最高を更新した。営業利益、経常利益に至ってはそれぞれ5期連続の過去最高益を達成し、戸建て住宅最大手としての貫禄を示した。しかし、19年1月期は受注高で前期比2.6%減、中核の戸建て住宅・賃貸住宅事業の売上高も1.1%減と、それぞれマイナス成長を見通す。
その結果、同事業の営業利益も1.8%減を予想し、常勝に陰りが差す。19年10月には消費税率10%への引き上げが予定されており、駆け込み需要と反動減で住宅市場は大きな混乱が避けられない。その先も少子高齢化の進展で住宅市場の縮小は必至で、縮む市場への危機対応も待ったなしだ。同社は中期経営計画で「住」に特化した成長戦略を掲げるだけに、住宅市場の縮小への危機感はひとしおだ。