激戦区に参入せざるをえない危機感

ライバルの大和ハウス工業は住宅事業以外で積極的な事業多角化を進め、売り上げ規模で住宅業界トップを走る。対照的に積水ハウスは「住」にこだわってきた。この点について大和ハウスの幹部は皮肉交じりに、「利益率が低い住宅事業でこれだけ高収益を上げる積水ハウスにはかなわない」と話す。これもひとえに積水ハウスが中高級路線をひた走り、高付加価値の商品提供に大きくシフトしてきた結果だ。

しかし、市場縮小という危機に備え、路線転換を探ろうとしている。第1次取得者を狙う棟単価2000万円台前半の戸建て住宅に「第2ブランド」を設け、今秋にも全国展開に踏み切るからだ。これまでの中高級路線と一線を画し、グループ会社を通じた販売となるものの、仲井社長は「将来は新会社として独立を目指す」と意欲をみせる。

同社の戸建て住宅の平均単価は18年1月期で3800万円台に達し、高収益につなげてきた。それより4割も安い「低価格ブランド」の投入は、「住宅需要を増やすのではなく、過当競争を激化させるだけではないか」との懸念も根強い。ただ、「住」へのこだわりを捨てるわけにはいかず、激戦区に食い込まざるを得ないのが実態のようだ。

ガバナンスの毀損に加え、市場縮小というもうひとつの危機を抱え、同社は大きな岐路を迎えている。出だしでつまずいた新経営陣には危機を乗り切る不退転の覚悟が問われている。

(写真=iStock.com)
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