答えを発表する前に、ウソを見抜こうとするときの私たちの性と能力について紹介したいと思います。深刻なウソと隣り合わせで生きていない普通の生活を送る私たちは、「正直バイアス」というものを持っています。「人は正直なものだ」という性善説的な考え方の傾向のことです。これにより、私たちは普段、人の発言を聞いているとき、それを正直なものだと仮定して聞いています。
一方で、深刻なウソと隣り合わせ、あるいはウソを見抜かなくてはいけないプレッシャー下にある警察官や面接官は、「ウソバイアス」というものを持っています。これは正直バイアスの逆で、「人はウソつきだ」という性悪説的な考え方の傾向のことです。
「正直バイアス」もしくは「ウソバイアス」を持ちながら、私たちは日々、他者の発言の真偽を推定しているのです。それでは実際の正答率、つまり私たちのウソを見抜く能力はどれくらい高いのか。諸国の大学の研究室などで行われたさまざまな研究が、ほぼ同じ見解を示しています。それによれば、私たちのウソ検知の正解率は、54%です。この数字は高いのでしょうか。それとも低いのでしょうか。
疑り深い面接官に誤解されないために
ウソをついているか本当のことを言っているかは、単純に考えれば50%の確率で生じます。ですから、目の前の相手がウソをついているか否かをヤマ勘で答えたとしても、半分は当たるということになります。つまり、54%という数字は「ヤマ勘よりは少し良い」という程度なのです。この数字は、警察官の場合は60%程度と多少高くなるという研究も存在しますが、ウソに多く接している仕事をしている人でもあまり私たちとウソを見抜く能力には違いがないことがわかっています。
ここに問題があります。もし目の前にいる面接官がウソバイアスを持っており、ウソに関する知識がなく、見抜くトレーニングも受けていない場合、応募者が本当のことを話していても緊張や熟考のサインに過剰に反応し、ウソだと誤解してしまう可能性が高まってしまうということなのです。だからこそ、こうした誤解を与えないための準備が必要なのです。
それでは先の問題の答えと解説をしながら、準備をしていきましょう。正しい知識と適度な身体コントロールが要となります。