核のボタンを持つトランプは精神科医を受診せよ

このように、トランプ氏には「無自覚型」の自己愛性パーソナリティ障害の特徴がすべて認められる。ギャバードはトランプ氏を直接診察したことがあるのではないかと思うほどだ。おそらく、アメリカには似たような人物がたくさんいて、そういう人物を診察した経験から6つの特徴に気づいたのではないか。

自己愛性パーソナリティ障害は、病気というよりは性格の偏りなので、薬を飲んだからといって治るわけではない。困ったことに、この自己愛性パーソナリティ障害が最近激増しており、アメリカでは20代の人のおよそ10人に1人、全年齢の16人に1人が自己愛性パーソナリティ障害と診断された経験があるという。

トランプ氏もそのうちの1人であり、核のボタンを持つ立場にある以上、精神科医の診察を受けるべきだと思う。しかし、彼は典型的な「無自覚型」なので、精神科受診を断固拒否するだろう。

▼「薬では治癒しない」トランプ的な性格の人は日本にも大勢いる

トランプ氏ほど強烈ではないにせよ、この手の人物は日本にもいる。とくに、企業の管理職に多い。

たとえば、業績が良く、できる人材が集まった部署に異動してきた40代の男性部長は、前任者のやり方をすべて否定しなければ気がすまないタイプで、部下の多くが困っている。

写真=iStock.com/DNY59

この部長は、とにかく前任者のやり方にケチをつけ、ひたすら部下にダメ出しすることで威厳を保とうとする。しかも、メディアで新たな手法が脚光を浴びるたびに、すぐに導入したがり、その研修に参加するよう部下に命じる。

そのため、「これまでのやり方でうまくいっていたし、業績も良かったのに、なぜ変えるんだ」という不満があちこちで出ているのだが、この部長はまったく気づいていないようだ。それどころか、「どうだ。新しいやり方のほうが、うまくいくだろう」と同意を求め、自画自賛するので、部下は答えに窮するという。

こういう人はどこにでもいるが、何よりも厄介なのは、当の本人が無自覚なことだ。過去の成功体験が大きく、現在も強い権力を握っているほど、周囲は迷惑する。その典型例を紹介しよう。