なぜヤクルト、ダイキン工業は欧州で成功したのか

ルールメイキング戦略に成功した日本企業が、空調機器メーカーのダイキン工業です。中国市場で同社製のインバーターエアコンの売り上げが伸びていますが、その理由は、ダイキンが中国政府に対して、インバーターの経済性や環境性能のよさをロビイングしたためです。その結果、中国政府がインバーターエアコンを推奨したことが、売り上げ拡大へとつながりました。

また、前述の藤井氏から聞いた話ですが、欧州でヤクルトが結構売れているそうです。ヤクルトは乳酸菌飲料ですが、欧州にはもともとその市場がなく、認知もされていませんでした。もし、そのまま市場に参入しても、清涼飲料水のカテゴリーに入れられ、コカ・コーラなどの大手と競合し、埋没してしまったことでしょう。そこで同社は、研究機関と協力して乳酸菌飲料が健康にいいことを証明します。そして、乳酸菌飲料の学会を立ち上げ、政府への認知を広めることによって、乳酸菌飲料の市場を形成したそうです。新たなカテゴリーを自らつくることによって、欧州にそれまでなかった乳酸菌飲料というイノベーションを起こすことに成功したケースと言えます。

逆に失敗例として挙げられるのが、米カリフォルニア州でのトヨタ自動車です。同州には、自動車メーカーに対して販売台数の一定割合をエコカー(ZEV:ゼロエミッションビークル)にすることを義務づけた「ZEV規制」があります。これまでは、プリウスなどのハイブリッド車もZEVとして認められてきましたが、2018年モデルから、ハイブリッド車の多くがZEVから外されることになったのです。規制変更を仕掛けたのは、同州に本社がある電気自動車(EV)メーカーのテスラだと言われています。主力のハイブリッド車を外されたトヨタは、今頑張ってEVの開発で挽回しようとしています。

これから世界市場で大きな成功を収めるには、ルールメイキングを含めた対応が不可欠と言えます。社会に貢献するビジョンを描き、その実現に必要なルールづくりのために、政府をはじめとする関係機関と人脈を築き、賢くしたたかに協議をしていくこと、そして、こうしたルールメイキング戦略に取り組める人材を育成することが、日本企業に求められています。

(構成=増田忠英 写真=時事通信フォト)
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