――60gというと、男性でビール500ml缶3本、女性はその半分ということですね。これは前編でお聞きしたような、先天的にお酒に強いタイプの人でも同じなんですか?
基本的にどのタイプの人も同じです。でも、そもそも両親から酒に弱い遺伝子を受け継いだ「弱い+弱い」タイプの人はそんなに飲めませんよね。心配なのは、父母のどちらかが酒に弱く、どちらかが酒に強いという「弱い+強い」人で、飲んでいるうちに少しづつ飲めるようになってしまったという人です。
「飲むと赤くなる」タイプの人は要注意
――日本人の半分弱が該当するというタイプですね。自分がそのタイプかどうか、判定する方法はありますか?
「弱い+強い」人を調べるのは簡単です。初めて飲酒したころ、飲酒によって顔が赤くなってしまっていたか。またはいまでも飲むと赤くなるかどうかです。このタイプの人が習慣的に飲酒をすると、がんのリスクがものすごく上がることが分かっています。特に多いのが、食道がんや咽頭がんといった、酒の通り道のがんですね。
自分がこのタイプに属するのかどうか、簡単に調べられる方法があります。「コップ半分程度のビールを飲んで、顔が赤くなりますか」「飲み始めて1年間くらいのときにコップ1杯のビールで赤くなりましたか」。このどちらかが「はい」なら、9割くらいの正確さで、「弱い+弱い」か「弱い+強い」のタイプですね。
――私はどうやら、「弱い+強い」タイプのようです。つまり、習慣的な飲酒は避けるべき?
赤くならない人でも飲み過ぎればがんリスクは高まりますが、赤くなる人はもっとリスクが高いということです。例えば、平均して1日2合お酒を飲む人に対して行った調査があります。もともと赤くならないタイプの人、赤くなるタイプの人、全くお酒を飲まない人の3つのグループで食道がんになるリスクを比べたとき、赤くならない人は飲まない人の6.5倍なんですが、赤くなる人は65倍くらいに上がるんです。
アセトアルデヒドには毒性があるので、食道がんだけでなく、咽頭がん、大腸がん、肝臓がん、乳がんなどのリスクも高まります。
――乳がんにもなるのですか? なぜ胸に影響が出るのでしょうか。
アセトアルデヒドは分解されるまでに、血液に吸収されて体のなかをぐるぐる回りますから、いろんな臓器に影響が出るんです。前編でお話したとおり、アセトアルデヒド自体はアルコールよりも体内に残る時間は短いんですが、「弱い+強い」タイプの人はアセトアルデヒドの分解が遅いことがありますから。