「タバコ同様にお酒も禁止しろ」とは言わない

やはり、小池百合子東京都知事にとって、「タバコ禁止」だけが人気取りの最後の希望となるようだ。これまで、当連載では、「タバコが害だと言い張り禁煙しろと主張するなら、もっと有害なお酒も同様に禁止すべし。そんな当たり前の理屈がわからないのは、脳みそが『禁煙ファシズム』に冒されているのだろう」と繰り返し繰り返し主張してきた。

私は、総理大臣首席秘書官として働いている間、一度もお酒を飲むことはなかった。なぜなら、内閣を揺るがすような突発的なアクシデントが起きたときに正常な判断が下せないのを恐れたからだ。とはいえ、他人にお酒を飲むのを止めろといったことは一度もない。私が問題として提起したいのは、「タバコが他人に対して害を与えるから止めろ」というのであれば、「同じように他人に対して害を与えるお酒も禁止しなさい」と言っているにすぎない。例えば、お酒には、こんな危険がある。

・認知症の高齢者の29%は大量飲酒が原因
・深刻なDVの32%は飲酒時に起きている
・刑事処分を受けたDV事例の67.2%が、犯行時に飲酒している
・犯罪白書によると、50代男性の窃盗の23%、万引きの再犯の26%が過度の飲酒が背景。
・飲酒の強要・酩酊しての暴言暴力やセクハラなどの被害者数は、3000万人を超える
※出所:アル法ネット

ところが、禁煙ファシズムとも呼ぶべき、「とにかくタバコが悪い」「絶対に許せない」と主張する人たちは、「タバコ同様にお酒も禁止しろ」とは言わない。お酒を提供するレストランに未成年者の出入りを禁止しろということも言わない。(DV事件の背景である)家での飲酒についても黙ったまま。弱い立場の人間がお酒を強要されていることなど日常茶飯事という事実(場合によっては、性的暴行事件に発展することも)は、彼らの頭にはないかのようだ。

血中濃度0.11~0.15という「酩酊初期」段階でも、「気が大きくなる」「大声でがなりたてる」「怒りっぽくなる」「立てばふらつく」という症状が飲酒者には起きることは医学的な事実だ。これだけ危険な薬物、「凶器」を放置しておいて、タバコだけ禁止など笑ってしまう。

角界を揺るがす大事件となった「貴ノ岩暴行事件」。モンゴル人力士の間に何が起きたのか、や、貴乃花親方の動向に注目が集まり、さまざまな憶測が飛んでいる。

しかし、各報道に共通するところは、日馬富士が「お酒を多量に飲んだ」ということだ。日馬富士がお酒でなく、タバコを吸っていたら絶対にこんな不幸な事件は起きなかった。お酒を飲むことで、アルコールの一症状である「怒りっぽくなる」「判断力が鈍る」という状況になったのだ。事実、英国のRoyal College of Psychiatristsには、「アルコールはなじみのドラック(薬物)といえます」「アルコールは、ヘロインや大麻といった非合法薬物よりもずっと有害です。アルコールは精神安定剤ですが、依存性もあります。また、飲酒による病気や事故で入院に至ることが数多くあります」「飲酒すると、危険を察知できなくなり、危ない目に遭いやすくなります。喧嘩や口論をする、金銭トラブルを起こす、家庭がうまくいかなくなる、行きずりの性行為をするといった問題も起こしやすくなります。また、アルコールは、自宅や路上での事故や水難事故、運動中の事故の原因にもつながります」と、明記されている。

ここまで、おかしなことがお酒が原因で起きている。それでも「お酒はオッケー、タバコはダメ」というのは、禁煙ファシズムとしか言いようがない。

今回で、今年の連載はひとまず一区切りをつける。

内田茂氏、石原慎太郎氏、豊洲市場など、何かをワルモノにして、人気取りを続けた小池都知事。最後のワルモノは、タバコということのようだが、この手法自体が社会にとって何の利益にもつながらないということを今回は論じてみたいと思う。