欧米から推測する4つの方向性
SPAとファストファッションが席巻した後のアパレルは、どこへ向かっていくのだろうか。ファッションの世界を牽引する欧米を観測していると、4つの変化が見られる。
ひとつは、ザラやH&Mの6掛け程度という低価格で商品を提供する「ディスカウンター」の都心進出。その代表がアイルランドに本社があり、イギリスで急拡大中の「プライマーク」で、撤退した百貨店の跡地など、都心に大型店舗を構える。プライマークの日本進出は未定だが、日本でも同様の業態が都心に進出する可能性はある。
そして「ブランドの過剰在庫の大量販売」。アメリカではポロ・ラルフローレンやカルバン・クラインなどブランドの過剰在庫を常時値引きして販売する「オフプライス・ストア」が好調だ。ただし日本のメーカーはアメリカほど過剰在庫を持たないので、同じ業態が成り立つかどうかは不明である。
3つ目が「ファストファッションの上位ブランドの登場」。ザラやH&Mなどファストファッションが、それぞれ「マッシモ・ドゥッティ」「コス」などの上位ブランドを提供し始めている。「コス」はもう上陸しているが、拡大すれば人気になるのは間違いない。
最後が「オムニチャネルを制した企業の躍進」だ。実店舗で商品を確認し、ネットで買う。あるいはネットで買って実店舗で受け取るなど、消費者にとって利便性の高いオムニチャネルに対応したアパレル企業が躍進している。ファッション業界は10年単位で流通の主役が入れ替わっていく。オムニチャネルをいち早く制した企業が、これからの10年を制するだろう。
ファッション流通コンサルタント
1965年、東京都生まれ。総合商社、欧州ブランド日本法人、アパレル専門チェーンを経て、2004年、ファッション流通事業のプロジェクトと人財育成を支援するディマンドワークスを設立。著書に『ユニクロ対ZARA』(日本経済新聞出版社)など。