ユニクロやザラも、立派な「ブランド」に
ブランドについても「終わった」と片付けていいものか。確かに百貨店で展開されているような高級ブランドに、かつての勢いはない。その代わり賑わっているのが、ユニクロやザラ、H&Mなど、製造から販売までを自社で手がけるいわゆるSPA(製造小売業)型のファッション企業だ。これらのアパレルは「洋服版ファストフード」を意味する「ファストファッション」とくくられるが、それも若い世代にとってはブランドなのである。
振り返って説明しよう。20年前のアパレル産業は、アパレルメーカーが洋服をデザインし、素材メーカーと縫製工場に製造を依頼し、販売店に卸すというビジネスモデルが主流だった。この20世紀型のビジネスモデルを揺さぶったのがユニクロのSPAモデルである。商品の製造から販売まですべてを自社で行うことによりコストを抑え、低価格を実現。さらに顧客の反応を見ながら生産量を素早く調整し、安価であることと高品質であることを両立させた。ユニクロの誕生以降、消費者は低価格であろうが洋服に「安かろう悪かろう」を許さなくなったのである。
そこへ08年にスウェーデンからH&Mが、09年にはアメリカからフォーエバー21が日本上陸。すでにスペインから日本進出済みだったザラとともに、ファストファッションブームを巻き起こした。一流デザイナーが1年以上かけて準備した新作コレクションが発表になるやいなや、そのテイストを生かした服をわずか2~3カ月で製造し、手頃な価格で販売してしまう。ベーシックなカジュアルファッションのユニクロが第1世代のSPAであるなら、手軽に最新の流行が楽しめるH&Mやザラは第2世代のSPAと言える。
さらにインターネットの発達で消費者の意識も変わった。かつてファッションの流行は欧州から始まり、アメリカで広まって、日本に来て大衆化するのは2~3年後だった。ところが現在はスマホ1台あれば、世界で人気のファッションがすぐにわかってしまう。
マーケットが成熟して、消費者の選択肢が広がった。価値観がフラット化し、かつて憧れの対象だった高級ブランドは、自分を演出するためのひとつの道具になった。そうなると全身を高級ブランドで揃えるのはかえって恥ずかしいことで、高級ブランドとファストファッションを組み合わせて個性を出すほうが一般人の中では評価が高い。だからいまの若者は、ユニクロやザラも立派なブランドとしてとらえる。つまりブランドの服が売れなくなったというよりも、ブランドの定義が変わり、「デパートで売っている服だけがブランド品」だった時代は終わった、と考えるのが正しいのではないか。