謙虚に野党との議論を重ねよ

読売社説の以下の指摘も肯ける。

「日中韓首脳会談を早期に開催し、対『北』圧力のカギを握る中国にさらなる対応を促すことが求められる」
「19年10月の消費税率引き上げに触れ、『財政健全化も確実に実現する』と述べたが、依然、具体性に欠ける。財政再建の新たな道筋を早期に明確にすべきだ」
「希望の党や日本維新の会とは、憲法改正や安全保障政策などで協調できる余地が大きいはずだ。立憲民主党も、憲法改正自体は否定していない。大いに議論を重ねたい」

最後に読売社説はこう安倍首相に要求して筆を置いている。

「安倍首相は、『自民1強』の驕りを排し、選挙戦で訴えた『謙虚さ』をきちんと行動に移さねばならない。野党にも譲るべきは譲る姿勢が、大きな成果を生むことにつながるのではないか」

沙鴎一歩の拙い取材経験からすると、歴代の首相に比べ、安倍首相は新聞の社説をよく読んでいる。とくに読売社説と産経新聞の社説(主張)には毎朝、目を通していると聞く。

この読売社説もしっかり読んでいるはずだ。謙虚に野党との議論を重ね、「日本丸」の舵をとってほしい。

「防衛力強化は評価する」と産経

安倍政権好きの記者が多い産経新聞の社説も、読売同様にこう批判、要求する。

「どこまで肉付けされていたかといえば、極めて物足りない。選挙中の演説内容と、さほど変わらないではないか」
「特別国会や来年の通常国会は、危機を実際に乗り越えるために必要な議論、立法を積み重ねるためにある。政策の深化、具体化へ大きく踏み込んでほしい」

こうした安倍首相に対する批判や要求はうなずける。

しかし次のくだりは首をひねってしまい、とても残念である。

「もし、外交努力が実を結ばなかったらどうなるか。万一の北朝鮮有事への備えも、もう先送りできない」
「国民保護やテロ対策、在韓邦人の退避、難民対処など課題は多い。政府が国民に協力を求める点があるはずだ。事が始まってからでは遅いのである」
「首相が『防衛力の強化』を約束したのは評価するが、その方向性が見えない。ミサイル防衛体制だけでは十分でなく、敵基地攻撃能力の整備も欠かせない」