これは永田町では「候補者プロモーションビデオの概念を変えた」といわれたものだ。政策を伝えるのはもちろん大切だが、いかにスマートに格好良く見せるかのほうに重点が置かれている。旧態然とした考えでは出てこない作り方だった。

シールズが目指したプロモーションモデル

シールズというと、平和運動を基本としたアジテーションやデモが話題になったが、私は“ダサすぎた”市民運動を、アーティストのプロモーションレベルに高めたことが最大の功績だと考えている。

以前、シールズの創設メンバーである奥田愛基氏と対談したことがある。その時、彼が語ったことは、政治的なイシューではなく、「いかに選挙運動を格好良くするか」ということだった。彼らは「市民運動=ダサい」という図式を変えようとしていた。今回の立憲民主党のネット戦略には、その経験が生きているように見えるのだ。

惜しかったのは、今回の選挙で、立憲民主党がインスタグラムやLINEのアカウントを作らなかったことだ。若者や女性にリーチするには、欠かせないツールになっている。おそらく重要性は理解しながらも、手が回らなかったのだろう。

立憲民主党・枝野代表の10月14日の新宿演説

自民「圧勝」に変化を起こす若者の力

立憲民主党のようなネット戦略が、本当に票に結びつくかどうか。まだわからないが、これからより効果が高くなることは間違いないだろう。

そして今後のネット戦略の中心を担うのは若者だ。大手の広告代理店よりも、若者たちのほうが、ネットの本質である共時性や共感性を、直感的に理解できているからだ。なかには写真や動画作成能力でプロに引けを取らないスキルをもった人間がいる。なにより、若者たちの参入によって、今まで遅れに遅れていた政治のネット活用が、一気に音楽業界のレベルにまで引き上がったのだ。

今回の選挙は突然始まったこともあり、なかなか準備が進まなかった。実際、希望の党はそこでつまずいた。対して、立憲民主党の頑張りは素晴らしいと言わざるをえない。これがさらに洗練されたときに、ネットが投票結果に大きく影響することになるはずだ。では、その洗練された姿とはどのようなものか。次回詳しく述べたいと思う。(つづく)

高橋茂(たかはし・しげる)
ネット選挙コンサルタント。1960年、長野県上田市生まれ。電子楽器のエンジニアだったが、2000年に長野県知事選に関わったのを機にインターネットと政治の世界に。02年、政治家がネットを使って情報発信するツール「ネット参謀」を開発。議員や政治団体などのサポートやネットメディアのコンサルティング、講演、執筆など多方面で活躍し、「デジタル軍師」の異名を持つ。選挙情報データベースサイト「ザ選挙」の立ち上げ人。著書に『マスコミが伝えないネット選挙の真相』など。VoiceJapan代表取締役、世論社代表取締役、武蔵大学非常勤講師。
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