今回の総選挙でも、自民が強く、民進党はボロボロになるだろうというのが当然の見方だった。しかし、選挙前に民進党は事実上崩壊し、希望の党と立憲民主党が生まれた。そして、立憲民主党は民進党時代の「ネット下手」がウソのように、発信力を高めた。

「枝野人気」の背景にあったもの

立憲民主党は10月2日の結党宣言から2日あまりで、自民党のフォロワー数(約11万3000)を抜き、単独トップに躍り出た。そして、投票日までに19万フォロワーを超える勢いを保った。

枝野幸男代表が行く演説会はどこも大盛況。失礼ながら、選挙前まで枝野氏個人ではとてもこんなには集まらなかっただろう。私も新宿東南口で10月14日に行われた「東京大作戦」と銘打った街頭演説を見たが、ものすごい熱気だった。立錐(りっすい)の余地もないほど人であふれかえり、プラカードを持って立っている支持者の表情も目が輝いているように見えた。

さらに驚いたのはその拡散力だ。私が自分で撮影した写真をツイッターにアップしようとしていたら、次々と同じ街頭演説での写真や動画がアップされていった。これは組織的な動きというよりは、ツイッターを使い慣れた支持者が、立憲民主党の公式ツイッターでの指示を受けて拡散していたのだと思われる。

新しい世代が見せた拡散力

おそらく、写真や動画の臨場感が、「これはすごいから知らせなくちゃ」という気にさせるのであろう。党が指定したハッシュタグには、同じ場所で取られた写真や動画がズラリと並んで掲載されていた。そしてツイッターだけでなく、フェイスブックでも次から次へとシェアされていた。これまでの民進党では考えられないような拡散ぶりだった。

運営者の「普通さ」も功を奏した。ツイッターの運営者が「今日は疲れました」とツイートするなど自然体の発言が多かった。民進党のように大手広告代理店に依頼していれば、こういう発信にはならないだろう。「手作り感」がある一方で、発信のクオリティーは高い。

枝野代表の街頭演説映像を見ると、若者が横に立ってプラカードを掲げている姿が目につく。映像のレベルも非常に高くセンスが良い。これは2016年の衆議院北海道補選でSEALDs(シールズ)を中心とした若者たちがつくった映像に似ている。彼ら自身が明言していないので特定は避けるが、一部は、明らかにシールズの元メンバーが関わったと思われる作りだ。