2020年度には、六本松を通る市営地下鉄七隈線が、博多駅まで延伸される計画だ。大手企業の支社や営業所は博多駅周辺にも多く集まっており、男性は「格段に便利になるはず」と話す。さくら不動産にも問い合わせが増えており、田中さんは「(地下鉄空港線沿いの)西新や姪浜、(西鉄天神大牟田線沿いの)平尾、大橋といった転勤者に人気のエリアに、六本松が割って入る可能性は十分ある」とみている。

さらに続くインパクト、街の将来は

六本松の再開発ストーリーには、まだ続きがある。複合施設「六本松421」南側では、今もつち音が響く。ここには2018年夏ごろ、中央区内にある福岡地裁、高裁などの裁判所が移る予定で、さらに検察庁、県弁護士会館も順次移転。弁護士事務所などの物件探しも熱を帯びつつあるという。

(上)地下鉄を上がると、かつての六本松からは想像も付かない風景が広がっている(中)魅力的な飲食店も多く残る六本松。来年以降、さらににぎわいが増すかもしれない(下)六本松421の東端にたたずむ「青陵乱舞の像」。学生街の記憶を今に伝える

新たな一歩を刻み始めた六本松。六本松商店連合会の会長も務める眼鏡店「光和堂」の大島さんは、「明かりが漏れる街によみがえってほしい」と願う。かつて軒を連ねた商店街は夜になっても店の明かりが通りを照らし、行き交う人が声を掛け合う場所だった。大島さんにとって「六本松421」は、そうした街の風景を取り戻す「核テナント」なのだ。

小料理店「なぎさ」の店主、名郷梅子さん(70)も「六本松もだいぶ変わったねえ。でもまだまだ変わるやろ」と期待する。1979年に開店し、40年近くにわたって学生やサラリーマンに親しまれてきた。約30年前に始めたランチは、メーンのおかずにご飯とみそ汁、漬け物、小鉢2品というボリュームで750円という“六本松価格”。かつては教官に学生が連れられて来ていたが、これからは法曹関係者らでにぎわうことになりそうだ。

マツロッポン探索の終わりに、六本松421の東端に回ってみた。ここには制服、制帽姿で手ぬぐいを手に踊る3体の銅像がある。九大の前身の旧福岡高等学校の同窓会がキャンパスに建て、学生に親しまれていた「青陵乱舞の像」を移設したものだ。

時代は変わっても、学生街の記憶とともに彼らは六本松を見つめ続けるだろう。

(記者:福間慎一)
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