※当記事はqBiz 西日本新聞経済電子版の提供記事です
「ラブホだろ」と炎上
「えっ、これで1泊6000円?」。福岡市・天神周辺のホテルに1人で泊まった中年男性は、あまりの安さに驚いた。
法事のため東京から福岡へ帰省。交通の便がいい中心部に泊まろうとインターネットで探した結果、「破格」のホテルを見つけた。
料金は地方のビジネスホテル並み。それなのに部屋の仕様はまったく違った。ベッドは広く、テレビも大きい。トイレと風呂は別々で、しかもリゾートホテルのように洗練されていた。2泊3日の日程で滞在した男性は「また泊まりたい」と気に入った様子だ。
実は、ここは元ラブホテル。10年ほど前、普通のホテルに業態転換した。壁や天井を彩った青やピンクの「どぎついカラーリング」(支配人)をやめ、白と黒を基調にした落ち着いた雰囲気に変えた。
現在、「業績を伸ばしている」というが、道のりは平坦ではなかったようだ。
ネットの予約サイトにホテルの情報を載せたところ、次々にクレームが書き込まれた。昔の業態を知る人たちとみられ、「ここってラブホだろ」「何で宿泊サイトに載っているんだ」などと炎上したという。
当時、玄関ロビーにはラブホテルの“象徴”とも言える部屋選びの大型パネルがあった。ホテル側は早速撤去。「脱ラブホ」(支配人)を徹底したところ、書き込みはなくなったという。
訪日外国人客の急増もあって、今は福岡のホテル業界にも追い風が吹く。
支配人は振り返った。
「あのままだったら今ごろダメだったかも」
大型投資に二の足?
総務省統計局によると、バブル期の1990年は3300万人を超えた20~30代の人口は、2016年に2800万人を下回り、2割近く減った。「ラブホテル市場が縮小した」といわれるゆえんだ。
普通のホテルに転換するには大きな投資がいる。営業許可が風営法から旅館業法に変わり、対面式のフロントなどを設置する必要があるためだ。