億円単位の資金がかかる場合もあり、中小事業者が多いラブホテルには「痛手」。しかも、資金を借りるにも「金融機関がなかなか融資してくれない」(ラブホテル経営者)のが実情だ。

そうした中、政府がある号令を打ち出した。

16年4月、厚生労働省が日本政策金融公庫に対し、ラブホテルが普通のホテルに業態転換する場合、「積極的に対応するように」と通知した。

狙いはホテルの増設だった。20年の東京オリンピックを見据え、訪日外国人客のさらなる増加で深刻化が予想されるホテル不足に手を打った。

ところが、大型投資に二の足を踏んでいるのか、公庫によると、通知後1年間のまとめで、融資実績は「ゼロ」だ。

心配りの「脱ラブホ」

今の姿のまま生き残りを目指すラブホテルは呼称を「レジャーホテル」などと変え、サービスも広げている。

女性だけで飲食や宿泊を楽しむ「女子会プラン」からさらに進み、プロの料理人を迎えて食事メニューを大幅に強化するところも福岡で出てきたという。

ビジネス利用を促す「心配り」として、ホテルを経営する企業名を記した領収書

さらに、こんな心配りもある。

福岡県内で3つのラブホテルを経営する高崎次郎社長(51)は、1枚の領収書をみせてくれた。

そこには屋号の「ホテルエリス」の名はなく、経営する企業名が記されていた。もともと領収書を出す商習慣はなかったが、ビジネス利用を得るためという。

「ホテル名を伏せた方が、会社への経費申請がすんなり通る。家庭内でも無用な誤解を与えずに済む」と読む。

福岡市・中洲のクラブをイメージして作った会員カード。利用するとポイントがたまり、割引きを受けられるが、カードに「ホテル」の記述はない

ノートパソコンや携帯電話などの忘れ物を届ける場合も、ゴルフバッグを自宅に送る時のように、本人が本人宛てに届ける形にして発送する。その際の職場や自宅への連絡も、百貨店や自動車販社の名前で本人を呼ぶ「心配り」(高崎社長)ぶりだ。

料金も「お一人様の利用は30%オフ」としたところ、1人で泊まるスーツ姿の男性客が増えてきたという。利用すればポイントがたまって割引きを受けられる会員カードも作り、福岡市・中洲のクラブをイメージして名称を「クラブエリス」とした。